マツダ技報 2017 No.34
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-140- マツダ技報 自動車のドライバーは,フロントウィンドウ周りのAピラー,フロントヘッダー,インパネ上端などで構成される窓枠を介して,外界を見て運転している。これまで,窓枠の形状の違いが運転しやすさに影響することは,フィーリング評価によって判っていたが,なぜそのような影響が生じるのか,そのメカニズムは不明であった。 そのメカニズムが解明できれば,意のままの走りにつながる運転のしやすい窓枠周りのデザインを,人間の特性に基づいて,なぜそのようなデザインになっているかという意味的価値とともに,お客様に提供することができる。 そこで,この人間に内在する窓枠越しの外界認知メカニズムの解明に取り組んでいる。そのためには,窓枠の違いが,脳における外界の認知や注意に関わる機能に,どのような影響を与えているのかを理解する必要があるとともに,感性に関わる脳の働きを計測する必要がある。脳の働きを計測するさまざまな技術が実用化されているなかで,認知や注意,また感情や情動と関連する感性に関わる脳活動を計測するには,脳の深部までを含めた脳全体を,高い空間分解能で計測できる,MRIを用いた計測法が適切であると考えた。 は避けられない。しかし,実験協力者に走行風景と窓枠を単純化し模擬した動画を提示し,窓枠形状のみが異なる条件間において,脳の活動状態と行動の違いについて,矛盾のない解釈ができれば,窓枠形状の違いに対して,実車で生じるフィーリングの違いを説明できると考えられる。 MRI計測環境では,実走行は不可能であり,走行風景と窓枠を模擬した動画を,限られた画角で提示する方法を採らざるを得ない。また,実験協力者はMRI装置内に仰臥した姿勢をとる必要がある。このように,MRIを用いた脳機能計測では,実際の走行条件と差異があること2.1 実験デザイン 実験装置をFig. 1 に示す。実験協力者に対して相対位置の変化しない枠を窓枠に見立て,それを介して見えるNo.34(2017)今回は,従来のフィーリング評価により,外界が認知しやすく運転しやすいとされている,Aピラーが垂直に見え,窓枠全体として長方形に見える窓枠の特徴に注目して,以下の実験を実施した。 走行中の外界の景色を模擬した動画をディスプレイに表示し,MRIスキャナに仰臥する実験協力者に提示した。 更に中心に常時固視点(黒色の十字)を表示し,固視点と同じ垂直位置で水平位置の異なる5か所に,ランダムなタイミングと順番でターゲット(赤色の円)を1秒間表示した(Fig. 2)。 実験協力者には,運転しているつもりになって,固視点から視点を動かさないようにしながら,ターゲットが出現したら出現した位置にかかわらず,右手で把持している押しボタンスイッチを,親指でできるだけ早く押すように教示を行った。 窓枠条件は,フィーリング評価の良い,外界を認知しやすい窓枠の形として,Aピラーが垂直(垂直ピラー条件;Fig. 2(a))と,外界を認知しにくい窓枠の形として,Aピラーが斜め(斜めピラー条件 Fig. 2(b))の2条件を設けた。これらの窓枠に対し2種類の速度条件を設け,窓枠条件(垂直・斜め)×速度条件(60km/h・160km/h)の4条件とした。1回の実験において7分10秒のセッションを,計4セッション実施した。1セッションのターゲット提示は100回(各ターゲット位置×20回)であった。 また,運転中のフィーリングの良さには,移動している感覚をポジティブに感じられるという,感性的な評価も寄与していると考えた。そこで,この感性的な評価をワクワク (a) MRI Scanner Target (b) Display Contents Fig. 1 Experimental Equipment Display Fixation Point MRI Scanner Mirror (c) Layout Push-Button switch Participant 1. はじめに 2. MRI実験の方法

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