マツダ技報 2017 No.34
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Condition Relative to Those in the Vertical Pillar Condition -142- マツダ技報 そこで,ターゲットの検出時に脳がどのように活動していたかを,窓枠の単純主効果が有意であった,ターゲット位置Right2に対して検討した。 この楔前部は,先行研究(例えば,Astafievら(2) など)によると,注意のコントロールに関連する部位であることが知られている。これを考えあわせると,ターゲット位置Right2において,斜めピラー条件で反応時間が有意に長くなったことは(Fig. 3),斜めピラー条件において,固視点からターゲットに注意を移すとともに,ボタンを押す作業に必要な注意コントロールに関わる脳活動が増大し,反応時間の増加として行動の変化に現れたと解釈できる。 以上のことから,実走場面においては,Aピラーが垂直となる,窓枠が長方形に見えるデザインでは,Aピラーを越えて注意を移動させる際に必要な認知的負荷が少ないということが考えられる。このようなメカニズムを考慮することによって,運転しやすい窓枠デザインにつながると考えられる。 ワクワク感の主観評定値と相関のある脳活動部位の検討を行った。運転経験低群(大学生 n=16)と運転経験高群(マツダ社員 n=16)に群分けすると,異なった脳部位に正の相関がみられた。 運転経験低群では,左上前頭回(BA9),運転経験高群では,右下前頭回(BA45),両側前頭眼窩野(BA10),両側MT野(BA19/37)にワクワク感との正の相関がみられた(Fig. 5)。この中で,前頭眼窩野(BA10)は情動の処理に関わっており,意思決定などその他の前頭葉機能と情動を関係づける部位であることが知られている(3)。また,MT野は運動の知覚に関わる部位であることが知られている(4)。このことは,運転経験高群では運転を模擬した状況に対して,ワクワク感が強く感 No.34(2017)MRIにより計測したデータは,MATLAB(The Math-Works,Natick,MA)上で動作する脳機能画像解析ソフトウェアSPM12(1) を用いて解析した。ターゲット位置Right2にターゲットが提示されたとき,斜めピラー条件において,垂直ピラー条件と比較して,楔前部(precuneus)において有意に大きな活動が見られた(Fig. 4)。 BA9BA10BA19/37 BA45Tilted Pillar > Vertical Pillar Fig. 4 Significant Brain Activities in the Tilted Pillar for Detection of the Target Presented at Right2 (Uncorrected p<0.001 with 20 Vox. Ext.) Fig. 5 Brain Activities Positively Correlated with the Subjective Ratings of a Feeling of Excitement. (Uncorrected p<0.001 with 20 Vox. Ext.) (a) The Activation in the Left Superior Frontal Gyrus (BA9) Observed in the Low Driving Experience Group (University Students; n=16). (b) The Activation in the Inferior Frontal Gyrus (BA45), Orbitofrontal Cortex (BA10), and Middle Temporal Gyrus (BA19/37) Observed in the High Driving Experience Group (Mazda Employees; n=16) Precuneus (BA7/31) (a) (b) 4. 反応時間と脳活動 5. ワクワク感と脳活動
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