マツダ技報 2017 No.34
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3.1 プロポーション・・・美しいバランス クルマとしての走りの良さを感じていただける骨格表現 3.2 フロントフェイス・・・ブランド表現の進化 フロントの表情を左右する,ファミリーフェイスの考え -10- マツダ技報 上品な艶やかさと大人の風格を感じさせる,精悍なエクステリアデザイン 初代CX-5で好評を得たバランスの良いパッケージングを継承しつつ,躍動感に満ちた若々しいキャラクターを成長させ,精悍かつ堂々とした佇まいを備えた大人の風格を創出することに注力した。クルマとして美しいキャビンとボディーのバランスとスタンスの良さを強調する「プロポーション」,シンプルな造形の中にエモーショナルで美しい映り込みを手仕事でつくり込んだ「フォルム」,随所に採り入れた精緻で端正な「ディテールデザイン」により,艶めきのある精悍なエクステリアを実現した。 を狙った。視覚的な重心位置を下げ,ボディー全体がしっかりと地面を掴んだプロポーションを表現している。前後トレッドは10mm拡大し,タイヤを限界まで外側に配置してスタンスを強化した。また,フロントタイヤ,リアタイヤがしっかりとボディーを支えて見えるようキャビンとボディーのバランス見直しを行った。キャビン前方のAピラー付け根位置を先代モデルから約35mm後退させ,フロントアクスルとAピラーの位置を適正化,ボンネット部分はグリル上端を車両先端付近まで延長,カウル部分は逆にウィンドウ側へ延長することでオーバーハングを伸ばすことなくトータルで約100mm長く見せている。また,ベルトラインは前側の高さを上げ,後ろ側を下げることでやや水平方向へアジャストし,キャビンを薄く,ボディーを厚く見せている。これらによりスポーティーで走りの良さを感じさせる,美しいプロポーションを実現した。またこれにより,交差点での前方左右見開き角や斜め後方振り向き視界の視認性向上も図った(Fig. 2)。 方を進化させた。水平基調の要素を強め,上質で落ち着きNo.34(2017)ぐ架け橋という重要な位置づけの商品である。 新型CX-5では,初代CX-5を選んでいただいたお客様にもう一度選んでいただくことを目標の一つに掲げている。そのために,ドライバーだけでなく,同乗者を含む全てのお客様に「走る歓びの深化」を感じていただくことを目標として開発した。デザイン領域ではこれを「美しいもの,上質なものを所有することで日々の暮らしをより豊かに感じられる歓び」ととらえ,その実現へ向けて開発した。カスタマーの人生とともに歩み,より大人の成熟した価値観にふさわしいデザインへと深化させること,それは同時にCXシリーズが3,4,9とレンジを広げる中で,CX-5として最適な立ち位置の見直しにもつながった。 2. デザインコンセプト 新型CX-5のデザイン開発は,マツダにとって次世代の究極のビジョンモデルの一つであるRX-VISION(2015年の東京モーターショーで初公開)と同時期に進められた。「Car As Art」実現のために,人の手で作られた「ぬくもり」や日本の美,特に「引き算の美」へ着目していく中で,新型CX-5としても,新しいデザインを生み出すために「単に目新しい何か」を加えていく手法ではなく,初代CX-5の持つ魅力,その良さを更に磨き上げ,研ぎ澄ます中でより上質なデザインへと深化熟成を図る方向であるとねらいを定めた(Fig. 1)。 この考えをベースとして,新型CX-5のデザインコンセプトは「Refined Toughness = 洗練された力強さ」と設定した。世界的に見られるSUVの一般化という潮流の中で,大人の風格を感じさせる上質な世界観と,SUVらしい力強さの融合による「美しい力強さ」の表現を狙ったものである。「Refined」という言葉の「洗練された」という意味に,磨き上げ,研ぎ澄ました先に現れるマツダがイメージする「美しさ」を重ね合わせている。 Fig. 1 RX-VISION Fig. 2 Proportion 3. エクステリア
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