マツダ技報 2017 No.34
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3.3 冷間鍛造技術の適用によるギャップの解消 -171- Fig. 6 V-Shape Gap of End of Pipe in Case of Roll Fig. 7 Forming Process of Conventional U-O Forming No.34(2017) 3.2 U成形後の予備曲げ成形に関して マツダ技報 接されるのであるが,端面は開いており,ここを埋めるためパイプ自身を溶かしながら隙間を埋めている。これには大量の熱を必要とし,電気抵抗溶接もギャップ部分の体積補充のための入熱問題が問題となる。この大量の入熱は高張力鋼板のHAZ割れの原因となり,TiやVなどの元素の添加が必要となってくる。また凝固時の収縮により精度の変化が発生する。 そこで目指すべき溶接形態は端面完全密着と,その端面のみの溶解と凝固を可能とする溶接方法が必要である。そのため、成形は冷間鍛造の技術に,接合はレーザー溶接の技術に解を求め,端面の精度としては小野らがレーザー溶接の間隙に関して必要と述べている(1)0.1mm程度以下を再現することとした。 従来の均一周長のU-O成形は単純曲げであり,U成形による弾性回復のみを考慮すればよいが,周長可変の素管の場合は弾性回復に加えて次の点を配慮する必要がある。 Fig. 6にロール成形の溶接前の無拘束の形状を再現した端面を示す。この状態からロールにより圧着され電気溶Fig. 7に一般的なパイプ成形の工程を示す。まず素板から所望の形状に切断し,その後U形状に成形する。その後,O形状の成形を施す。このプレス加工を以下,U-O成形と呼ぶ。こののち,溶接を施し素管となる。U-O成形における生産技術的に制御可能な因子は,O成形工程に至るまでの工法選択及びその形状の決定と材料寸法及び溶接方法及び条件の適正化である。 Fig. 8に直径の変化するU-O成形のパイプの展開形状を示す。図中の斜線部は展開時の余肉であり,この部位が影響して変形の不均一を発生させる点。ρ1,ρ2の曲率の変化する部位を持っている点。これら二つの要素が加わることで離形後の端部の位置は金型形状とは大きく異なる。この離形後の形状変化を制御する必要が生じる。形状制御の要件は,次のO成形のため端部がO成形工程の上型形状(=∩)の内側に収まることである。これを実現するための前処理としてO成形工程の前に予備曲げ成形の工程を設ける。 放されると図中,右のように弾性回復によりギャップが生じる。 ここでこのギャップのオーダーを確認する。板厚中心の直径2r=φ100,板厚t=2.6として,外周のひずみはt/2rで与えられ,2.6%となる。Yp=600MPaの弾塑性体と仮定すると弾性回復のひずみは±0.29%となる。すなわち外周側は周長全体ではおよそ-0.9mmとなる。内周側も同様に+0.9mmとなり,通常の曲げ成形ではレーザー溶接に求められる0.1mm程度の間隙を得ることができないことを示している。 そこで塑性変形後の弾性回復によるギャップを解消する手段として冷間鍛造としての圧縮による成形に解を求めた。すなわち素管周長より長い材料で成形し全圧縮を得ることである。この割合を幾何学的圧縮率(以下GC Fig. 6にロール成形の溶接前の無拘束の形状を再現した端面形状を示したが,通常の板曲げ成形でも同様な現象が発生する。Fig. 9に示すように外周部分は引張り応力が,内周部分には圧縮応力がかかる。離形後,この応力が解Fig. 8 Developed Shape from Pipe to Plane Formed Pipe without Restraining Force Fig. 9 Difference of Elastic Removal

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