マツダ技報 2017 No.34
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Fig. 4は,車室内側から音を発生させて,車両側方下部のサイドシルから車外に漏れる音を可視化した結果で 2.2 前席と後席の音圧差 新型CX-5は,「乗る人すべてが快適に過ごせる車室内空間を提供する」コンセプトを実現するため,前席のみでなく,後席の静粛性にも注力して開発を行った。 -21- No.34(2017) 2.3 音の減衰時間 更に,会話のしやすさは,音圧レベルの低減に加え,マツダ技報 3.1 会話明瞭度の向上 会話明瞭度向上のためには,車外のタイヤ騒音や風騒それぞれの指標での会話のしやすい/不快を感じない領域を「静粛ゾーン」と定義し,新型CX-5の静粛性は「静粛ゾーン」を目指した(Fig.1)。 前席・後席とも会話明瞭度の向上とロードノイズの低減を図りながら,前席と後席の性能差が前モデルに対して少なくなるように目標を設定した(Fig. 2)。 乗員に違和感を与え,不快と感じさせる車両後方からの侵入音を,重点的に低減することにより,会話明瞭度の大幅な向上とともに,前席と後席の会話を愉しめる快適な車室内空間の実現を目指した。 音の過渡的な減衰特性(響きの長さ)も重要な因子である。そこで,新型CX-5は,音の響きの長さを前モデルに対して短縮することで,会話のしやすい音響空間の実現を目指した。 その実現ため,音の響きの長さを定量的に評価する手法を開発し,車室内に単発的に発生する音の時間変化を計測してこれを評価指標とした。 音の音源低減と音源から車室内への伝達特性改善(=遮音性能の向上)が必要である。 遮音性能は,フロアやドアなどの部品の音響透過損失に左右される。しかし,Fig. 3のように,面積比で僅か1%の穴・隙が部品としての透過損失を約5dB悪化させ,部品全体の遮音性能が大きく損なわれてしまう。そこで,穴・隙を縮小させて遮音性能向上を図った。 ある。図の赤い部位が音漏れの大きい部位を示しているが,実際の走行時では,この部位から音が侵入することになる。サイドシル内部には生産工程で必要な多数の穴が設定されているが,それらの穴を塞ぐことで音圧の低下を確認し,音の侵入に影響の大きい穴が特定できた。 そこで,これらの穴について,シール強化による穴塞ぎFig. 1 Quietness Chart Fig. 2 Sound Pressure Gap between Front and Rear Seats Fig. 3 Relationship between the Performance of Sound Fig. 4 Visualization of the Sound Leaking Insulation and Aperture Ratio 3. 静粛性開発技術

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