マツダ技報 2017 No.34
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*1~5 エンジン性能開発部 -29- 特集:新型CX-5 6 Redaction Technology of Diesel Nocking Noise for SKYACTIV-D No.34(2017) マツダ技報 2.1 ディーゼルノック音の概要 ディーゼルノック音(以下ノック音)は,燃焼と同期要 約 A new generation clean diesel engine, SKYACTIV-D 2.2, was developed and applied to the New Mazda CX-5. In addition to its excellent power, fuel economy and emission performance, the engine has less knocking noise than that of the previous diesel engine. To reduce the knocking noise, we worked on the reduction of combustion exciting force, the optimization of structure resonance and damping technology, and the engine-to-vehicle pathway of the noise. This report introduces the efforts presented above. Engine Performance Dept. 白橋 尚俊*1 NaotoshiShirahashi長門 清則*4 KiyonoriNagato制御)”,振動低減技術の“ナチュラルサウンドスムーザー(以下NSS)”や遮音,車体の振動伝播低減技術を紹介する。 して発生する間欠的な変動音である。 ノック音低減には,従来から ・燃料噴射のタイミングや噴射量の最適化など燃焼加振力を低減する手法 ・エンジンの構造共振やダンピングの調整,吸遮音材設定などの伝達,放射を抑える手法がある(2)。 通常,燃焼加振力の低減は燃費性能や出力,エミッション性能と相反する関係にあり,構造系の伝達放射対応は重量やコストへの影響が大きい。これらの相反する要件をクリアし,ねらいのノック音を成立させるには,ノック音の発生メカニズムを解明し,主たる特性に適切な対応を施すことが重要である。 森 恒寛*2 Tsunehiro Mori 菊地 拓哉*5 Takuya Kikuchi 岩田 陽明*3 Kiyoaki Iwataマツダは新世代クリーンディーゼルエンジンとして,優れた出力,燃費,エミッション(排出ガス)性能に加え,従来モデルから更にノック音性能を改良したSKYACTIV-D 2.2エンジンを開発し,新型CX-5へ搭載した。本稿では,ノック音低減技術として,燃焼加振力の低減や構造特性の最適化,エンジンから車両への伝達経路に基づいた車両全体での取り組みについて紹介する。 Summary 近年の世界的な燃費志向の高まりと厳しくなるエミッション規制をクリアし,お客様に“走る歓び”を提供するため,SKYACTIV-Dエンジンを開発した。2012年以降CX-5,アテンザ,アクセラに順次導入し,クリーン,パワフル,エコノミーを高い次元で実現することで従来のディーゼルエンジンのイメージを一新させている。 一方,クリーンなエミッションや燃費低減など,環境性能を更に向上させるには,燃焼の高効率化が必要となる。そうなれば燃焼加振力が増大し,“がらがら”というディーゼルノック音が悪化する方向となる。 新型CX-5では,燃費,エミッション,走りに加え,エンジン音をステップアップさせた。これにより優れた環境性能(1)を確保しながら,ディーゼルエンジン(以下DE)特有のノック音を大幅に低減させ,新世代クリーンディーゼル車として,静粛性を飛躍的に向上させた。 本稿では,この新世代クリーンディーゼルエンジンSKYACTIV-D 2.2に採用した,新たな燃焼技術である“ナチュラルサウンド周波数コントロール(以下周波数1. はじめに 2. ディーゼルノック音 SKYACTIV-D ディーゼルノック音の低減技術

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