マツダ技報 2017 No.34
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3.2 CPL周波数特性のからくり解明 CPLの周波数特性のメカニズムを明らかにするため, ]il -30- ged/J,2gedhgeh,epos xaM_RHOR/J[ t※ROHR(Rate of heat release)CPL[dB] 一方で,ノック音と燃費はトレードオフの関係になっており,先に述べた方法でCPLを下げると燃費の悪化を伴ってしまう。 マツダ技報 Cylinder Pressure Level(以下 CPL)で表せ,CPL は,燃焼が急速に燃えるほどレベルが大きくなる。この燃焼2.2 ディーゼルノック音の伝達経路と周波数特性 ノック音の発生メカニズムを明らかにするため,燃焼3.1 燃焼加振力低減の取り組み ノック音の燃焼加振力は,燃焼圧力をFFT 処理したNo.34(2017)加振力がどこを伝わって音として放射されているのか,それを実験,及びCAEを使って主要な経路を調査した。その結果,80%以上がピストン,コンロッド,クランクを介してブロック表面から放射されていることが明らかになった。 このブロックから放射される音は,1.3kHz,1.7kHz,2.5kHz,3.5kHzの4つの周波数にピークがあり,主にこれらがドライバーに“がらがら”というノック音として聞こえていることがわかってきた(Fig. 1)。 これらのピークは,伝達経路となっているピストン,コンロッド,クランク等のインターナル部品の共振周波数が燃焼加振力によって励起され発生していると考えられる。そのためノック音を低減するには,これらのピークレベルを低減することが必要となる。 新型CX-5では,この4つの周波数に着目して燃焼加振力と伝達特性をコントロールすることで,大幅にノック音を低減した。これらの対応技術に関し,詳細を説明する。 の急速度合いは「熱発生率の最大傾き」と「最大高さ」で表すことができ,これらの特性をコントロールする。 一般的には噴射タイミングや噴射圧を調整し,熱発生率の傾きや高さをコントロールすることで,CPLを低減している(3)(Fig. 2)。 DE固有の噴射方法と燃焼の形態に着目した。 燃費との両立には,燃費に関わらない,もしくは燃費が良くなる特性をコントロールして,CPLを低減することが必要となる。このためCPLの周波数軸に対する山や谷(ピークやへこみ)のメカニズムをひもとき,両立化の検討に取り組んだ。 通常,自着火燃焼を行うDEでは,メイン燃焼の他に,火種となるプリ燃焼や煤を再燃焼させるアフター燃焼など,1サイクル中に燃料を複数回噴射し,複数回の熱発生をつくることが一般的である。この場合,各々の熱発生から圧力波が発生するが,熱発生間の時間差により圧力波に位相差が生じる。この位相差による各圧力波が波の重なりにより,増幅したり打ち消したりすることによってCPLの周波数特性を決定していると考えた(4)。 そこで簡易的な熱発生波形を作成し,熱発生の間隔とCPL周波数特性との関係をシミュレーションにより分析した。その結果,熱発生の間隔の変化に応じて圧力波の干渉の仕方が変化し,CPL周波数特性の山(増幅)や谷(減衰)が発生することがわかった。 この熱発生間隔と山や谷が起きる周波数は,波の重なりで表せ,以下の式(1),(2)で表現できる。 nは周期的に発生する山や谷の次数(1,2,3,・・)であり,Δtはそれぞれの熱発生間の時間間隔である。 山位置周波数■■■■■■■1000 ■1■ 谷位置周波数■■■■■0.5■■■1000 ■2■ Fig. 1 Relation between Knocking Noise and Structural Resonance 10J/deg2,10J/deg1dBbadFig. 2 Relation between CPL and ROHR Max_slopeMax_height3. 周波数制御による燃焼加振力の低減

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