マツダ技報 2017 No.34
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-40- マツダ技報参考文献ルク変動が大幅に増加することから,従来の剛性低減やイナーシャ追加のアプローチでは大幅な変更が必要になり,いずれもマツダの目指す走り性能(アクセル操作に対する応答性)を満足することができない。そのため振動減衰デバイスとして,エンジン振動に対して逆位相に振れることで振動を減衰する「遠心振り子ダンパー」を採用した(Fig. 16)。 遠心振り子ダンパーの採用により,固定イナーシャに対して約半分のイナーシャ追加で大幅な減衰性能改善が可能となる。これにより気筒休止の可能範囲拡大に貢献し,燃費性能,NVH性能,走り性能の全てを高いレベルで両立させることができた(Fig. 17)。 の温度差が拡大し,変形や熱応力が発生する。また,ピストンリングのすきまから筒内にオイルを吸い込むが,休止気筒ではそれを燃やすことができず,筒内に蓄積されていく,といった気筒休止に伴う懸念点を洗い出し,机上計算及び実機を使用し全ての課題の潰し込みを行った。更に,万が一故障した時に重篤不具合に至る課題については,フェールセーフ制御を織り込んだ。例えば,燃焼している気筒の吸排気バルブが意図せず休止してしまうと,燃料が未燃のまま筒内に溜まりリキッドコンプレ4.4 信頼性の造り込み 気筒休止状態で運転することで燃焼気筒と休止気筒間ッションによるエンジン破損に至る懸念がある。意図せず休止することはないことを確認しているが,万が一の場合でも,クランクの角速度変動をモニターすることで異常を察知し,燃料供給を止める制御を織り込んだ。気筒休止技術に焦点を当てて紹介した。気筒休止自体は従来からある技術だが,熱効率に優れたSKYACTIV-Gと組み合わせることで,全ての負荷領域でダウンサイジングエンジンを凌駕するエンジンに仕上げることができた。コモンアーキテクチャ構想に基づき,本技術を排気量が異なるエンジンにも展開し,全てのお客様に優れた環境性能と走行性能をお届けしていく。マツダ技報, No.30,pp.3-8 (2012)■著 者■野田 明裕山本 賢宏SKYACTIV-G 2.5気筒休止エンジンの新技術について,No.29,pp.8-13 (2011)荒川 博之本瓦 成人居軒 年希西本 敏朗No.34(2017)Fig.16 Damping Mechanism of CPA Fig.17 Vibration Improvement Effect (1)富澤ほか:新型デミオのエンジン技術,マツダ技報, (2)長谷川ほか:CX-5 SKYACTIV-Gのエンジン技術,(3)室谷ほか:新型ガソリンターボエンジンSKYACTIV-G 2.5Tの開発,マツダ技報,No.33,pp.16-22 (2016) 5.おわりに

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