マツダ技報 2017 No.34
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-53- No.34(2017) 2.1 NDモデルのパッケージ思想 前述のとおり,NDモデルは先代のNCモデルから大幅な車両のコンパクト化を行った。具体的には,ホイールベースを20mm短縮。また,ヨー慣性モーメント低減のため,乗員を車両内側に15mm寄せて配置した。 2.2 パッケージ思想を守ってルーフを収めるには? 上記を前提とし,かつホイールベースをNCモデルから20mm短縮しているので,乗員からリアホイールまでの距マツダ技報 る道を選んだ。 そのレイアウトは,結果的にルーフ格納スペースもコンパクト化することにつながるため,開発チームはそれまでにないルーフ格納の知恵を絞る必要があった。 さまざまな案を検討した結果,ルーフを「一部残す」決断を下した。その結果,NDモデルのRHT(以下,ロードスターRF)は,トンネルバック形状(後に詳細を説明)を持ち,かつバックウィンドウ部分が開口するという,自動車史を俯瞰しても,ユニークな車型になった。 一般的には,縦置きフロントエンジンを持つ車は,トランスミッションに押し出され,ペダルを車両外側にオフセットさせる場合が多い。つまり,必ずしもドライバーの正面にペダルが配置できず,下半身だけ「外を向いたような」ポジションを強いられる。前述の理由からNDモデルでは乗員を内側に寄せているので,その傾向は更に強くなる。 しかしマツダでは,ドライバーが正面に向いたまま自然に脚を置ける,ドライバーに正対したペダル配置を基本思想にしている。NDモデルでもその思想を踏襲するべく,手段として,エンジンに対して乗員の位置を後退させた。 もともと,前後重量配分を50:50とするロードスターの伝統的なレイアウト思想を深化させるため,フロントホイール軸に対してエンジンをNCモデルよりやや後退した位置に配置しているので,上記と合わせ,フロントホイールを基準に言うと35mm,NCモデルより乗員位置を後退させた基本レイアウトとしている(Fig. 1)。 離は55mm短くなっている。このスペースは,まさに,これまでRHTがルーフを収めていたスペースが55mm少なくなることを意味する(Fig. 2)。 歴代ロードスターは,高い運動性能を目指す以外にも,実用的かつ日常ニーズに十分に応えるクルマ作りを実現してきた。具体的には,アフォーダブルな価格,オープンカーとして高い耐候性,乗り降りのしやすさ,二人が小旅行に出掛けられる程度の荷物を収める十分なトランクスペース(Fig. 3)など。ロードスターRFでも,それらの要件はより上位に位置付けられる重要なコンセプトである。 一方,前述のレイアウトによって,ルーフを格納するスペースは少なくなっている。キャンバス幌であれば傘のように省スペースで折り畳むことができるが,ハードルーフは格納のための一定のスペースを必要とする。 ルーフを完全にボディーに収めることを目的と据えるならば,まず思いつく実現手段は二つ。一つはホイールベースを延ばしてルーフ格納スペースを広げる方法。もう一つはトランクスペースを減らす,もしくはトランク内にルーフを収める方法。しかし,いずれもロードスターとしての上位概念に抵触する。それは「ない」と決めていた。 ロードスターとして「何が必要なのか?」を,研ぎ澄まして決断を下す必要に迫られた。 Fig. 1 Basic Layout Fig. 2 Roof Storing Space Fig. 3 Boot Space for 2 Persons 2. レイアウトの特徴

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