マツダ技報 2017 No.34
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-54- マツダ技報 ース縮小に向かわなかったチームは,少ないスペースにいかにルーフを畳むかの知恵出しに注力した。幌のように自在に「曲がる樹脂」の可能性追求や,一部手動による取り外し機構,8分割等の多分割構造を検討した。しかし,いずれも現実的ではなかった。 そこで案として浮上してきたのが,格納部分を思い切って小さくする案,逆に言うと「残す部分」を大きくする案である(Fig. 4)。 アイデアとしてはリアリティーがあったが,オープン時のスッキリ感,クローズ時のスタイルのまとまりともに,中途半端と言わざるを得ず,美しいデザインを目指す魂動デザイン(Fig. 5)への期待に応えるものには程遠いと,デザインチームの誰もが感じた。 このままでは暗礁に乗り上げると追い込まれたとき,逆転の発想に至った。何が目的で何が手段かを突き詰めて考えると,目的は開放感であり,その手段の一つがルーフの格納であったはずだと,あらためて気付くことになった。 十分な開放感が得られるのであれば,ルーフが全て格納される必要はないではないか?という逆転の発想である。 3.1 目的は「開放感」,ルーフ格納は「手段」 より上位の概念として,車両寸法の拡大やトランクスペ3.2 閉じても開けても美しい姿 ルーフの全てを格納しない,逆に言えば,ルーフの一4.1 流麗なルーフライン まず特徴的なのはサイドビューのシルエットである。No.34(2017) Fig. 4 Roof Study Fig. 5 KODO Soul of Motion 部が残るとすれば,どのようなカタチが美しいのか? ここには大きな迷いはなかった。一枚のキースケッチ(Fig. 6)を見たデザインチーム全員が一瞬で「これだ」とひらめいた。リアデッキに緩やかにつながる流線型のルーフラインを描き,それをそのまま残そうというアイデア。また,そのルーフラインがトランクスペースを犠牲にしないように,自動車のスタイリング用語で「トンネルバック」や「フライングバットレス」と呼ばれる,バックウィンドウ後ろが開放された特徴的な形状を考え付いた。 そのアイデアをすぐにより詳細な絵に起こし,その後3Dデータを作成して全体の形状確認やルーフ格納の動きについて検証を開始した(Fig. 7)。 ルーフを一部残すことを決断し,流線型のルーフラインを実現するという方向に舵を切ってからが,実は開発にとって最大の難関だった。その開発の経緯に触れる前に,デザインのねらいについて紹介する。 ルーフラインはリアに行くにしたがって緩やかに傾斜する,いわゆるファストバックと呼ばれるシルエットを描いていFig. 6 Key Sketch Fig. 7 CG for 3D Modeling 4. デザインのねらい 3. 逆転の発想で生んだルーフ格納
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