マツダ技報 2017 No.34
63/207
-56- マツダ技報 なる。であれば,バックウィンドウは必ず開放されなければならない。そのためには,バックウィンドウが垂直に近く立っている方がウィンドウの上下寸法が小さく,格納に有利である。 また,短くなったバックウィンドウとは対称的に,トランクリッド面を延長するカタチになるデッキ部は反対に長くなり,全長の短い車体でありながらもたっぷりとしたデッキ長を形成する(Fig. 12)。 このような優美な表情が生まれることも,トンネルバックを採用した理由である。 インする際には,このラインの通し方を慎重に行い,スムーズで違和感なく仕上げる必要がある。通常このパーティングラインは,ドア以外にボンネット,トランクリッド,給油口周辺に存在しているが,開閉式ハードトップを持つロードスターRFでは,ルーフとボディーの境目のラインが余分に加わることになり,ライン要素が多くなる分,煩雑な印象になってしまう。 しかし,このラインを違和感なく通し,むしろボディー形状の特徴をより強調して見えるようなラインにできれば,ラインとして煩雑な印象が払拭でき,見た目にも心地よい美しさを表現できると考えた。 具体的には,もともと存在しているボンネットの開口ラインを延長し,ドア上端を流れ,そのままトランクリッド開口ラインまで滑らかにつながるラインとした(Fig. 13)。 この一連のラインは,ボディーサイドの面がボディー4.3 美しいパーティングライン 自動車のボディー上には,ドア部のように,部品同士を接触させないための一定のクリアランス(数mm)を持たせた,パーティングラインがいくつか入っている。デザ上側の面に変化する位置に沿わせている。これは,自動車のスタイリング用語で「ベルトライン」や「ショルダー」と呼ばれる部位のラインそのものであり,ボディー形状の特徴が端的に表れるラインであるため,ここにパーティングラインが通っても,見た目に違和感を覚えにくくなっている。また,水平方向を向いた面にラインがあるので,クルマを横から見たときには,スキが目立ちにくい。 しかし,このパーティングラインは,まさに部品の分割ラインであるため,実際には内部構造の小型化や,組み立て時の搭載方法に知恵を絞らないと実現できない。また,耐候性を保証するシール機能を確実に持たせることや,合い沿いを安定させる工夫が込められている。その奮闘ぶりは,本マツダ技報の「リトラクタブルハードトップの開発」編に詳細に記載されているので,そちらを参照いただきたい。 感を高めるアイテムや,ルーフ開閉という操作自体を楽しめるアトラクティブな演出を心掛けた。 ・より触感を楽しめる柔らかい革シート(5.2項目に詳細)。 ・ルーフを開ける瞬間に気持ちも「ON!」になれる開閉スイッチ。 ・後方からの風の流れをしなやかに受け止める上品なウィンドブロッカー。 まず,ルーフ開閉スイッチは,「開ける,閉める」という,それぞれ逆方向の動きをつかさどるため,スイッチ中央のノブを上下に動かす「トグル型」と呼ばれるタイプにした。これに決めた理由は,爪の長い女性などの操作に不自由を掛けたくないことと,航空機などのコックピットにあるようなトグル型にすることで,気分を盛り上げる儀式性を感じていただきたかったからである。 また,スイッチ先端の形状は,ATセレクターやスポーツモードスイッチとテイストを合わせることで,むやみにデザイン要素が増えて煩雑に見えないように考慮した(Fig. 14)。 5.1 上質感と気持ちの高揚を演出 インテリアは,より上質になった車格感に合わせて質No.34(2017)Fig. 13 Parting Line Fig. 14 Roof Operation Switch 5. インテリアデザイン
元のページ
../index.html#63