マツダ技報 2017 No.34
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-57- No.34(2017) 5.2 後方視界に配慮したウィンドブロッカー ロードスターに限らず,多くのオープンカーはシート6.1 「マシーングレープレミアムメタリック」を追加 マツダでは,「カラーも造形の一部」という思想の下,Fig. 15 Wind Blocker 6. カラーデザイン マツダ技報 した塗膜の中に,アルミフレークが一定間隔で平滑に並んだ状態を形成。緻密でありながら,光の当たる面全体が強く輝くリアルな金属質感を実現した。また反射層とカラー層の双方に発色の良い漆黒顔料を使用してアルミフレークの隙間から透過させることで,光の当たらない部分に鉄独特の力強い黒みを持たせ,陰影のコントラストを高めた(Fig. 17)。 工業製品として使う通常の革の場合,一定の強度を保つために,銀面と呼ばれるもともとの真皮部分をほぼ削り落とし,保護膜をつけ,シボ押しをして表面を整えている。結果,革の耐久性は高くなるが,硬い質感になったり,ごわごわした印象になる。 それに対してナッパレザーの場合,革の柔らかさを生かすために,表層の傷やシワを軽く削るくらいに留め,その上に薄い保護膜を塗布しているだけである。そのため革後方に風の巻き込みを抑えるウィンドブロッカー(風よけ)を装着している(Fig. 15)。 ソフトトップ車では穴の開いた樹脂製としたが,ロードスターRFでは透明なアクリル製とした。後方が全て開放されたソフトトップ車に対し,このクルマのように部分的にルーフが残る形状だと,室内外の気圧バランスの関係で,後方からの風の巻き込みが大きくなることが風洞実験によって明らかとなり,ウィンドブロッカーを大型化する必要があった。単に大型化すると後方視界を妨げるため,透明にし,形状も最適化した。 中央部は面の角度を下に傾け,ルームミラーに室内の夜間照明が映りこむことを防いでいる。 魂動デザインのダイナミックかつ繊細な面構成を際立たせるカラーの開発に注力している。その一環として,機械の持つ精緻な美しさの追求をテーマに,力強い陰影のコントラストと表面の緻密さを高次元で両立することで,あたかも鉄のインゴットから削り出したかのようなリアルな金属質感をねらった「マシーングレープレミアムメタリック」を開発し,新型CX-9から順次導入しており,今回,ロードスターRFにも採用した(Fig. 16)。 従来こうした質感表現は,極薄のアルミフレークを含んだ塗料を熟練職人が手作業で何度も塗り重ねて仕上げるコンセプトカーなどでのみ可能なものだったが,マシーングレープレミアムメタリックでは,ソウルレッドプレミアムメタリック用に開発した塗装技術「匠塗 TAKUMINU RI」を進化させることで,クリア層,反射層,カラー層からなる塗膜構成での量産化に成功した。 反射層には,極薄の高輝度アルミフレークを含んだ塗料を,均一な厚みになるように精密に塗装した後,乾燥過程で劇的に体積を収縮させる手法を開発。これにより,一般的な反射層の約4分の1である約2.5ミクロンにまで極薄化6.2 シートにナッパレザーを追加 上級グレードには,しっとりとした滑らかな感触を持つナッパレザー(柔らかい革の総称)を採用した(Fig. 18)。 Fig. 16 Machine Gray Fig. 17 Paint-coat Composition

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