マツダ技報 2017 No.34
72/207

-65- Front HeaderFront RoofMiddle Roof Seal MaterialFig. 1 RHT Configuration Back Windowてる生産スタイルが考案された。 更には,分割されたユニットは協力メーカーへ委託生産され会社レベルの分業体制へと拡大した。 この分業によって,生産効率は飛躍的に向上し,削減した生産コストは販売価格へ転化され,低価格化による競合力強化を果たした。しかし製品を分割する構造の多くは複雑となりやすく,分割されたユニットのバラツキの累積や組立再現性等により,完成した製品の機能が不安定となり市場での品質問題の要因となる弊害が発生し課題となっている。 本稿では,複数のシステムやユニットを物理量で連携したモデルを活用し,机上段階でシステムレベルから部品レベルまでを総合的に評価するModel Base Develop-ment(以下,MBD)と,機能に対する設計諸元の感度と安定性の関係を明らかにする品質工学を連携することに加え,生産工程も考慮することで,複雑な構造を持つ製品であっても,品質を高く生産コストを低く抑える試みを行った。 まず,モデル要件となる評価対象と評価方法に対する考え方について述べる。次に適用事例を示す。 一般的に,燃費はお客様が車両性能を評価する重要な指標として用いられているが,化石エネルギーや電気エネルギーから移動エネルギーへのエネルギー変換を行った結果であり品質特性である。しかし,標高や気温などによって燃費値が大きく変化するようでは安定した品質とは言えず,お客様の信頼が得られない。よって,エネルギー変換を機能と定義し,エネルギー変換の効率と安定性を評価対象とした。 加えて,生産コストには歩留まりや累積バラツキを相殺する調整工数などが含まれるため,部品単品の加工基準を兼ねた部品単品同士の組み付け基準穴位置の加工バラツキを入力とし,他のユニットを組み付ける基準位置の累積バラツキを出力とする位置エネルギー変換の感度も評価対象とした。 更に,自重によるたわみ量やシール反力による変形量を相殺する見込み値も評価対象とした。 エネルギー変換の効率と安定性,及び位置エネルギー変換の感度を効率的に評価するため,机上で直交実験を行う。 まず,共通項となる制御因子を探し出し,加法性のある制御因子の組み合わせを明らかにする。これにより,エネルギー変換の効率と安定性を最大とする設計諸元も明らかとなり,設計のセンター値を決めるパラメータ設計も可能となる。 マツダ技報 次に,許容加工誤差を拡大した水準にて直交実験を再度行う。これにより,位置エネルギー変換の感度が明らかとなり,感度が低い因子の許容誤差拡大検討や歩留まりと累積バラツキを相殺する調整工数の配分検討が可能となり,許容差設計も可能となる。 そして,モデルを弾性体とし剛体との相対比較を行う。机上での直交実験によって,位置エネルギー変換の感度が高い制御因子は分かっているので,自重やシール反力による変形量を相殺する見込み値つまり設計のセンター値のオフセット量を効率的に抽出可能となる。 ギーに変換し,ギアを経由して多関節リンク機構(以下,リンク)を駆動させることで,左右対称のリンクに締結されたルーフの開閉運動を行う構成となっている。 ルーフはフロントルーフやミドルルーフやバックウィンドウに分割され,分割部に中空形状のシール材を用いることで,雨水や外気温度などが車室内へ侵入することを防いでいる(Fig. 1)。 No.34(2017) 2. 評価対象 3. 評価方法 4. 適用事例 4.1 Retractable Hard Topの概要 Retractable Hard Top(以下,RHT)は,バッテリーから供給された電気エネルギーをモーターの回転エネル

元のページ  ../index.html#72

このブックを見る