マツダ技報 2017 No.34
76/207

← Closeと -69- Change 4.9 モデルの構成 これらの評価を机上で行うにあたり,3D形状に依存し参考文献 AssemblyGravityOpen→Fig. 12 Evaluation Modes マツダ技報 た領域はVirtual.Labを用いてプラントモデルを開発した。プラントモデルに力を加えた結果となる応答速度によって次回のモーター軸出力トルクなどが変化するパワーフローは制御を含めてMATLAB/Simulinkにてコントロールモデルを開発した。このプラントモデルとコントロールモデルを連成させることで,ルーフを開閉させるモーターの負荷に応じて電圧や電流やルーフの開閉速度などが過渡的に変化する機構を再現した。 更に,操作ミス防止と評価効率を高めるため,直交表に準じて自動でブラケットの組み付け基準穴位置を変化させてはブラケット同士を組み付けリンクとし,リンクに分割されたルーフを組み付けて自重を加えた後に開閉運動を行う一連の生産工程を自動で行うモデルとした(Fig. 12)。 に設定された加工基準穴位置から組み付け基準穴位置までの距離を共通の制御因子として,設計のセンター値を決定可能とし,適正な生産コストで目標品質を達成可能とし,自重やシール反力をキャンセルする見込み値を決定可能とした。 これは設計諸元の最適化と生産工程の最適化であり,製品をユニットレベルに分割した構造として個別に生産し,流れ作業の中で分割したユニットを組み立てる生産スタイルの弊害とされる責任の所在と限界の不透明さの排除であり,市場に安定した品質の製品を提供するために必要なシナリオの具体化でもある。安定した品質は,顧客満足度にも貢献し愛着となり荒廃も減少する。つまり,限られた資源の最大有効活用であり豊かな社会の実現にもつながる。 その一方で,評価対象となる機能の本質を見極めるこMBDは机上段階で品質工学の目的を達成させる具体的な技術手段であり,MBDと品質工学の親和性は極めて高いといえる。本稿で紹介した適用事例では,ブラケット(1) 田口玄一:田口玄一論説集<第三巻>,日本規格協会,pp.413-438(2012) (2) 長松昌男ほか:製品開発のための新しいモデル化手法(機能モデルの基本概念),日本機械学会論文集C編,64巻,622号,pp.131-138(1998) とができれば,モデルが再現すべき機能も最小限となり簡易的なモデルで必要十分となる。今回,適用事例として選定したRHTは複雑な構造となっているため,まず詳細なモデルを用いてMBDと品質工学を連携させて機能の評価を試みた。結果として多くの知見を得ることができたが,詳細なモデルは扱う情報量も多く収集し精査する工数なども多くなり,モデルの開発効率は高いと言い難い。 今回の試みにて得られた多くの知見を用いて機能の本質を見極め,次回は簡易的なモデルでも同等の結果が得られるようにモデル要件を整備し開発の効率を高め,より高く安定した品質を低い生産コストで市場に提供し,豊かな社会造りに貢献していきたい。 ■著 者■ 徳光 文広 No.34(2017) 5. おわりに

元のページ  ../index.html#76

このブックを見る