マツダ技報 2017 No.34
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第2に,工程設計のプロセスも,従来の構造ありきで工程を考えるのではなく,構造と工程を同時に検討するプ 3.2.2 ビジネス効率 もうひとつの特徴は,活動指標として「物理量を用い 統一デザインテーマ「魂動」が目指したところは, 4.2 「魂動」デザイン実現のプロセス 本章では,「モノ造り革新」の取り組みの具体事例を, 4.2.1 デザイナーの「想い」の共有 「魂動」デザインを採用した新世代商品群以降の量産-72- でのファンイベントに積極的に参加するなど,“コト造り”へと取り組みの輪が広がっている。 4. 「魂動」デザインの実現に向けた取り組み という方法で行っている。個々のクルマを美しくするだけではなく,群として見たとき,オンリーワンでかつ一貫性のあるメッセージを持つデザイン群を創ることで,ブランドとしての存在感を高めている。また,人の手によってしか生み出すことのできない芸術的なフォルムにこだわり,それをクルマのデザインとして具現化するために,いきなりクルマのデザインにとりかかるのではなく,さまざまなフォルムの「オブジェ」をつくり,どんなカタチが人の心を打つのかを追い求め続け,目指すカタチをつくる。こうしたプロセスによって,強いメッセージ性と一貫性を作り上げている(Fig. 6)。 「生きているものだけが持つ,豊かな表情や力強い生命力を感じられるクルマをつくる」ことであり,「そのカタチは命を宿したものだけが放つ,一瞬の動きや美しさを表現する」ことが「魂動」デザインの志である。 新型CX-5では,マツダデザインが追い求める「心を揺さぶるほどの美しさ」を更に磨き,そのレベルをアートの領域にまで高めてきた。 「魂動」デザインの実現の取り組みを例に紹介する。 準備を開始するに当たり,デザイナーが実現したい「想い」(ビジョンやターゲット)を,モノ造りに関わる全ての生産技術メンバーが,理解・共有・浸透するための,デザインカスケードやプロジェクトごとの商品説明会を開催してきた。 マツダ技報 3.2.3 「モノ造り革新」の成果 マツダの「モノ造り革新」を推進した結果,クルマ造4.1 実現する「魂動」デザインとは 初代CX-5を始めとする新世代商品群のマツダデザインは,デザインの思想,造形,その洗練を「群で魅せる」No.34(2017)造」と「理想工程」を追究した。 ロセスに変革した。「コモンアーキテクチャー」では,構造のどこを共通化(固定)して機能を高め,どこを変えて個性を出すのか(変動)を設定している。「フレキシブル生産」では,工程のどこを共通化(固定)して効率を追究し,どこでバリエーションに対応するのか(変動)を設定している。それぞれの「固定と変動」に対して,徹底的な整合取りを実施し,従来にない画期的な構造や生産技術を提案することで,構造と工程の最適化に関する徹底的追究が可能となった。 たビジネス効率」を使用している点である。「ビジネス効率」は「価値」÷「コスト」で定義されるが,物理的な指標で構成される「価値」と,貨幣換算指標である「コスト」は,同時に議論することが困難であった。そこで,Fig. 4に示すように,「コスト」を,「コストを決定する物理量」に置き換え計算することで,定量的かつ論理的な判断が可能になり,スピーディーに最適化することが可能となった。 りのプロセスが大幅に進化し,商品品質とコスト抑制を同時に実現することができた。具体的には,車両の軽量化やエンジンやトランスミッションの性能向上による燃費や走りの改善,開発工数や生産設備への繰り返し投資を大幅に抑制できた。 また「モノ造り革新」に関わり,デザイン/開発部門との共創活動を通して,社員一人一人が「お客様の期待を超える価値を自分自身が提供する」というマインドに変化し,自ら考え行動する風土変革が始まっている。この変革は,お客様への生産のこだわりを発信する活動にもつながっている。例えば,全国各地のサーキット会場Fig. 5 Business Efficiency Fig. 6 Objet of KODO Design

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