マツダ技報 2017 No.34
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3.4 プロセス再構築に向けた課題 外観品質保証プロセスの再構築を行うには,それぞれ そこで,直接お客様の目に触れるパネルの板外側と裏 しかし,外装部品形状全体をソリッド要素で表現する -77- No.34(2017) 4.1 CAEによる実機での微細な現象の再現手法確立 実機パネルにおけるキャラクターの鮮鋭さが損なわれる微細な現象をCAEにより再現するため,これまでに成形性評価を主体としたシェル要素による解析を実施した。しかし,大きく二つの課題が挙げられた。 (1) パネル表裏それぞれの挙動再現性の限界 マツダ技報 デザイナーが言葉として発する「キャラクターが薄い」,「沈み方が意図と異なる」などこれまでより更に細やかな意匠を正確に再現するには,外観品質保証プロセス各工程での効率化や改善の範疇だけでは実現が困難だった。そこで,外観品質保証プロセスの新たな理想に向けて,マツダの「モデルベース開発」の考え(2)を組み入れることで以下のように標榜した。 ① 机上段階で品質の作り込みを完結する ② 実機段階は机上段階での作り込みの確認のみとする ③ 机上と実機段階の等価性に向けたフィードバック実現 これらの方向性を実現すべく,外観品質保証プロセスの再構築を行った。 の段階における以下の課題解決が必要だった。 (1) 机上段階における課題 関連付けながら解決する必要があった(Fig. 4)。 シェル要素では板厚方向での中立位置にのみ要素が配置され,パネルの上面・下面は仮想的に表現される。また,シェル要素では板厚の変化など板厚方向における成形過程のパネルの挙動をより正確に再現するには限界がある。 (2) 要素サイズ微細化の限界 シェル要素における最小の要素サイズは,板厚以上のサイズが望ましいとされる。主にフィレットR部などの形状において,板厚方向の曲率半径中心側へオフセットした要素の干渉よる悪影響を防ぐためである(Fig. 5)。したがって,数十㎛レベルのキャラクターの変化を再現するには要素サイズの点から考えると大きな乖離がある。 側にあたる板内側のそれぞれの挙動を実要素で表現し,板厚方向の成形過程をより正確に表現することが可能なソリッド要素の適用により解決を試みた(Fig. 6)。 と,メモリー消費量の増加や計算時間の増大など新たな課題が明らかになった。そこで,キャラクター部の評価a) CAEによる実機での微細な現象の再現手法確立 b) CAEで再現した現象の定量的評価方法の確立 c) デザイン意図を再現させる補正方案の作り込み (2) 実機段階における課題 d) 金型の精巧な造り込み e) 机上段階と等価を保持する品質育成要領の確立 f) 実機段階における b.の定量的評価方法適用 g) 確度向上に向けた机上段階へのフィードバック これらの課題を,ひとつのVサイクルプロセスとしてFig. 5 Intersection Caused by Offset Elements Fig. 6 The Difference of Representation by Elements Fig. 4 Model Based V-Type Development Process 4. 机上段階の取り組み
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