マツダ技報 2017 No.34
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2つ目は,工程機能を高めていくことで,省エネルギー化,省スペース化していくアプローチである。ブース, これらの取り組みによって,アクアテック塗装はFig.5 -88- マツダ技報 マツダのヘリテージの表現を目指し,機械の持つ精緻な美しさを「緻密な金属質感」と「深み」という特性で,この2つを高いレベルで両立させたマシーングレープレミアムメタリックを導入した。 を光と影のリフレクションで表現する方法へ進化した。「カラーも造形の一部」という考えのもと,造形とともにブランドを象徴する赤を進化させるべく,ソウルレッドクリスタルメタリック(Fig.1)の開発に着手した。 自動車塗装は,電着・シーラー・中塗・上塗などの多様な材料の塗布と乾燥を繰り返した複層膜で構成される。一般的な塗装工程はFig.2 に示すように長い工程であり,塗料に含まれるシンナーなどの揮発性有機溶剤(以下VOC)の排出や,塗装ブースといった塗装設備で多くのエネルギー(CO2)を消費している。マツダの車両系工場から排出するVOCの95%,CO2の60%を塗装工場が占めており,塗装工程の環境対策はきわめて重要な課題である。 この課題に対して,マツダでは継続的に環境対策を進めており,2002年には中塗工程を上塗工程に集約し,中2016年11月に発表した新型CX-5は,これまでのキャラクターラインを用いた造形表現から,繊細な面の変化塗のブース及び乾燥工程を削減したスリーウェットオン塗装を開発した。更に2009年には,中塗の機能を上塗に統合することで中塗工程を削減し,VOCとCO2を同時に削減した世界トップレベルの環境性能を持つアクアテック塗装を開発し,現在は各工場へ水平展開を進めている(Fig.3)。 アクアテック塗装は,大きく2つの技術的アプローチを柱にしている。1つ目は,材料の機能を高めることで塗膜に必要な機能を再構築・集約していくアプローチである。アクアテック塗装では,中塗が担っていた耐チッピング性などの機能を高機能なベースコート層,高機能クリア層に分配・機能集約した(Fig.4)。 フラッシュオフ,塗装装置に求められる工程機能を物理・化学の原理に遡って解析し,機能を最大化する設備構造と制御を開発することで,省エネルギーと省スペースを追求している(Table 1)。 に示すようにVOCとCO2を同時に低減してきた。 No.34(2017)Fig. 1 Soul Red Crystal Metallic Fig. 2 Paint Process Table 1 Pursuit of Energy Efficiency Fig. 3 Process Transition Fig. 4 Distribution of Film Function 2. マツダの塗装の取り組み(1)

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