マツダ技報 2017 No.34
98/207
ソウルレッドクリスタルメタリックでは理想のスペク3層の機能を2層に集約する手法として,光を吸収する物質を用いて光の反射量をコントロールすることで,ア (3) 急激な明暗変化を実現する光吸収フレーク -91- No.34(2017) マツダ技報 トルを実現するための顔料粒子サイズを定めた。しかし,一般的に入手可能な顔料と顔料分散方法の組み合わせでは,ねらいのサイズに到達できないことがわかった。そこで,顔料の結晶サイズから小さくしていくことに加えて,塗料中で顔料が凝集しない分散工法を開発した。分散工法においては,分散メディアのサイズ,分散時間,分散剤の種類を最適化していくことで,安定的な分散品質と生産量を確保した。 金属調反射の実現にはギラギラしたメタリック塗装固有の質感(以下,粒子感)ではなく,緻密で面で光るような特性と光が正反射するハイライト領域での強い反射が必要である。従来のアルミフレークは,表面の凸凹や外周面で光が拡散してしまい,正反射光の強度は弱まる一方で,正反射でない方向にも光が反射する。また,反射強度を高めようと大粒径のアルミフレークを選択するのが一般的であるが,視覚の分解能付近までサイズが大きくなると粒子感が強くなる。これは,目指す「凛」のイメージとは逆であり,小さくても平滑なアルミフレークで強い反射をさせることにより面で光る特性を出せないかと考えた。そこで,表面が平滑で外周と面積比が最小になる円形を有し,人間の目が視覚分解できる限界サイズより小さくすることで理想の反射特性を得られるアルミフレークを開発した(Fig.14)。 このアルミフレークの開発にあたっては,実現したいカラーのイメージをアルミサプライヤー様と共有し,従来は製造効率やコストを優先して決めていた加工方法や工程条件を,意匠を追求することを第一としてサプライヤー様と共同で製造技術開発を行った。 この新規高輝度アルミフレークにより,ハイライトでの輝くような明るさと粒子感のないまるで1枚の金属板のような緻密な塗膜となり,面で光る特性を得ることができた(Fig.15)。 ルミフレークでの光の反射を阻害することなく吸収層の機能を反射層に組み込み、下の2層を1層にできないかと考えた。しかし,そのような機能を有する塗装材料は市場には存在せず,今回新規に塗料化できる光吸収フレークの開発を行った。この新規材料により,反射層と吸収層を集約でき,ハイライトからシェードにかけての急激な明度変化を実現した(Fig.16)。 ルミで反射した光を一方向にそろえる必要がある。そのためには,塗膜内のアルミフレークを平行に並べることに加えて,塗膜そのものの平滑性が重要になる。 ソウルレッドクリスタルメタリックでは,塗膜中のアルミフレークを水平に並べるために,溶剤や水分の蒸発による体積収縮効果を通常のカラーの1.5倍まで拡大した。5.1 下地の平滑性追求 塗膜の正反射光の強度を強くしていくには,個々のア(2) 急激な明暗変化を実現する高輝度アルミフレーク Fig. 13 Pigment Size Control Fig. 14 New Aluminum Flake Fig. 16 Express Metallic Reflection in Single Layer Fig. 15 Sparkle Level 5. 魂動デザインの造り込み
元のページ
../index.html#98