マツダ技報 2018 No.35
103/149

-96- 2.2 異種材料接合技術 従来の鋼板製車体は鋼板パネルをアセンブリーするモ生産性が求められる。 鋼板/アルミニウムの接合では,接合装置が両サイドからアクセスできる構造にはセルフピアッシングリベット(SPR)の適用が主流であり,中空材と板材の接合など片側からのみアクセス可能な部位にはブラインドリベットやフロードリルスクリュー(FDS)などの工法が用いられる。高強度鋼板とアルミニウムの接合では,SPRの適用が難しいため,摩擦圧接の原理を利用したフリクションエレメント溶接(FEW)の適用も始まっている。CFRPと金属の接合では,低い塑性変形能や層間はく離等の問題があるため依然としてブラインドリベットと接着による結合が主流である。 の限定的な使用が現実的と考えられる。量販車種を想定したマルチマテリアル車体の主要材料である鋼板,アルミニウム等の金属,これにCFRPを組み付けるための接合技術が必要となる。従来のリベット接合には生産性やコスト面の課題が大きく,自動化や低コスト化に対応した新たな接合技術が必要である。以下に,アルミニウム同士やアルミニウム/鋼板の異材接合法として実用化された「摩擦撹拌点接合」(2,3)をベースに開発中の,アルミニウム/CFRP摩擦撹拌点接合技術のメカニズム,性能について報告する。 るツールが下板まで挿入され,摩擦熱でアルミニウムを軟化させ,塑性流動により上下の板が固相接合される。アルミニウム/鋼板の接合では,同様にアルミニウム側から挿入されたツールは下板までは貫通せず,摩擦熱と加圧力により上下板の界面に金属間化合物を形成し固相接合される(3)。 アルミニウム/CFRPの摩擦撹拌点接合は,アルミニウム/鋼板の接合により近いと考えられる。高速回転するツールは上板のアルミニウム側から挿入され,挿入量は上板板厚内にとどめられる。アルミニウムとツール間で摩擦発熱し熱伝導により界面のCFRPの樹脂を溶融し Pulling out of tool Fig. 1 Example of Study of Multi-material Body Probe touches to Al Fig. 2 Schematic of Joining Process Shoulder touchesCompletion of penetration to Al マツダ技報 材料の接合技術が必要であり,それらをコストと生産性を高次元で両立し実現する必要がある。これらを背景として,平成26年度からNEDO委託事業「革新的新構造材料等研究開発」が開始され,革新的鋼板,アルミニウム,CFRPなどの軽量材料開発とそれらの接合技術開発が行われている。本稿では,マルチマテリアル車体の概要,NEDO委託事業の研究テーマの一つであるアルミニウム/CFRPの摩擦撹拌点接合技術開発の概要を報告する。 的な軽量化の効果も大きい。また,衝突安全性能,走行性能や振動騒音など車両の商品性に直結するため,車体の基本構造,材料の変更には大きな投資を伴う。車体構造の最適化,材料工法の選定が重要である。 現在の車体材料は鋼板が主体であり,今後も中心的な役割を果たすと考えられ,高張力鋼板,ホットスタンプ等の適用拡大が進み,中長期的には鋼板以外の材料も適材適所に適用したマルチマテリアル化が進展すると考えられている。既に欧州の一部高級車では,鋼板,アルミニウム及びCFRPを組み合わせたマルチマテリアル車体が実現されている。国内でも,軽量化と走行性能の向上をねらいにハングオン部品へのアルミニウム材料置換が進んでおり,一部の少量生産の高級車ではCFRP部材の適用も始まっている。 ノコック構造が主流であり,その接合には抵抗スポット溶接が1台当たり3000~4000点程度使用されている。抵抗スポット溶接は,副資材が不要で1点当たりの接合コストが小さい,ロボットによる自動化が容易でかつ接合時間が短い,板組に対する自由度が大きいなどの優れた特徴をもつ。マルチマテリアル車体の組み立てに用いられる異材接合技術も抵抗スポット並みの品質,コスト,2.1 車体のマルチマテリアル化 車体はボディーシェルとハングオン部品からなり,車両重量の40%を占める大物部材である。その軽量化はシャシーやパワートレイン部品等にも波及するため,二次3.1 接合プロセス及びメカニズム アルミニウム同士の摩擦撹拌点接合では,高速回転すCFRPは現状材料コストが高く,調達性,リサイクル性など考慮するとその特徴を最大限に発揮できる部位へNo.35(2018)2. 車体の軽量化と接合技術 3. アルミニウム/CFRPの摩擦撹拌点接合

元のページ  ../index.html#103

このブックを見る