マツダ技報 2018 No.35
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①Materials injection Die -107- Die Design Dept R&D Dept Process Engineering Surface Engineering CAD model Fig. 2 Production Process of Press Die Machining & assembly Press-forming trial Problems 1.Die accuracy 2.Relative accuracy 3.Behavior at forming Exterior Development process Material Pin Mass Production ③The lowest point Fig. 3 Forming Process of Drawing Mold Die-face Product ②Holding state Punch④Forming completion Die PunchDie No.35(2018) PunchPunchマツダ技報 2010年より品質工学手法を活用している(1)。発生する問題に対して,影響を与えている因子が何かを明確化し,一部デザイン面の精度でCADモデルに対しコンマ数ミリの乖離が発生した。この状態では次世代デザインで重要となる光が当たった際のリフレクションに,ばらつきや折れが発生し,生命感が表現できないという大きな問題が判明した。次世代デザインのリフレクションを実現するためには,現状より30%の寸法精度向上が必要であった。この問題を解決するため,外板ボディーの製作プロセスに対し,前後工程の設計から量産までを見据えた技術改善を進めることにした(Fig. 2)。 本稿では,デザイン面成形時の初工程であり,外板ボディーの約7割の形状を決定しているドロー工程に着目した事例を紹介する。 プレス加工のドロー工程の成形過程をFig. 3に示す。まず,①板材を金型にセットしスライドを降下,②上型とブランクホルダーにて板材をホールドして張力を加える。③その状態で上型,ブランクホルダーとも降下し,④下死点で成形完了となる。成形中の板材は,ホールド状態による張力と成形Rによる曲げ応力が加わることにより塑性変形し製品寸法が定まる。 デザイナーの意図どおりの製品パネルを成形するためには,金型自体を高精度に造り,その金型形状どおりに成形することが必要である。そのため,プレス金型製作部門の課題は大きく分けると次の3点である。 1) 単体精度向上(機械加工,手仕上げ精度) 2) 相対精度向上(組み付け,上下合わせ) 3) 成形時の挙動制御(金型,板材) これらの課題を解決する上でプレス金型製作部門では,よりロバスト性の高い条件を導くことで,デザインに追従できる製作技術の構築をねらっている。 3.1 ビッグデータの活用 流入量のコントロールを行うためには,設計した絞り初めに,1)単体精度と2)相対精度に対し,機械加工,手仕上げの金型造り込みによる精度向上や組み付け精度を向上させる取り組みを行い,静的状態における要求精度に対して効果を出してきた(2)。次に,3)成形時の挙動制御に取り掛かった。製品パネル成形中の金型は数百トンという力が加わり変形が生じている。そのため,静的状態で保証した精度とは異なり,上下型のクリアランス量に変化が起こる。この差が起因して,板材の張り出し量にばらつきが発生し,製品パネル精度の悪化につながっていた。この挙動はプレス設備の機差や傾きの影響が強く,容易に解決できない。 一般的に板材の張り出し量をコントロールするには,絞りビードにて張力を加えるが,クルマの外板ボディーなど深さが必要なものは,絞り成形と張り出し成形を複合して成形している。絞り成形は2点の力(静止摩擦力,動摩擦力)を考慮する必要があり,外乱の影響を受けやすい(3)。そこで,品質工学手法を用いて上記の外乱影響があったとしても,実機での流入量のコントロールが正確に行えるロバストな成形ができないか追求することにした。 ビードの張力が安定的に発生できる状態を決める必要があると考え,これを評価できる品質工学での目的機能を検討した。張力はブランクホルダーのはたらきにより増減している。そこで,この抵抗値を高める方法をまとめた(Fig. 4)。抵抗値の決定には,「しわ押さえ面抵抗」「ビード引き抜き抵抗」「ダイR通過抵抗」の3つがある。 2. 次世代「魂動デザイン」実現の課題 3. 品質工学を用いた課題解決

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