マツダ技報 2018 No.35
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*6 大同特殊鋼株式会社 技術開発研究所 -112- 20 Development of Computer Aided Engineering Technology 要 約 マツダは「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言」に基づき,走る歓びと環境性能を高次元で両立させてきた。ハイプレッシャーダイカスト(以下,ダイカスト)の領域では,その最重要課題を「軽量化」と考え,鋳造工法とCAE技術の革新を進めてきた(1)(2)。ダイカスト金型設計では,製品肉厚の薄肉化を軽量化の手段として,積極的にコンカレントエンジニアリング(以下,コンカレント)で形状提案してきた経緯がある。 Based on the ”Sustainable Zoom-Zoom”, Mazda achieved both driving pleasure and environmental performance at a high level. For high pressure die-casting, weight saving is considered to be essential, and the innovation of the die-casting method and CAE technology have been focused on. In die-casting die design, as a method of weight saving for making thinner plate of product thickness, we have proposed the shape of concurrent engineering. In order to realize drastic weight saving more than normal in next product, we determined an ambitious target which is a challenge to limit thickness that the shape can be formed. Therefore, it is inevitable to verify molten metal flow (molten metal flows into the product completely) which is a concern of casting quality by making thinner with model base. Powertrain Production Engineering Div. 竹村 幸司*1 KoujiTakemura菅谷 智*4 SatoshiSugayaCorporate Research & Development Center, Daido Steel Co., Ltd. 亀井 克則*2 Katsunori Kamei 河野 一郎*5 IchiroKouno米澤 英樹*3 Hideki Yonezawa達谷 正勝*6 Masakatsu Tatsutani薄肉ダイカストの事前検証技術開発 マツダ技報 次世代の商品では,従来を超える大幅な軽量化を実現するために,形状が成形できる限界肉厚への挑戦という野心的な目標を設定した。そのため,薄肉化により懸念される鋳造品質である,湯まわり性(溶湯が健全に製品に行き渡るか)をモデルベースで検証することが不可欠であると考えた。 Summary 車両の軽量化は,運転操作のダイレクト感向上とともに燃費の改善に貢献するため,鋳造部品の開発において重要課題として取り組んでいる。そのために,製品設計段階から鋳造解析により製品機能と品質の両立可能な駄肉削減をコンカレントで提案している。 更なる製品軽量化のために,製品の薄肉化を進めている。その理由は,薄肉前提で製品を設計することによって,局所的ではなく全体で軽量化効果を刈り取れるからである。しかし,その反作用として健全な溶湯が製品に行き渡らず,“湯じわ”や“湯境(ゆざかい)”と呼ばれる外観不良の総称である「湯まわり不良」に直結する*1~5 パワートレイン技術部 リスクをあわせもつ。したがって,製品の薄肉化と湯まわり不良をブレークスルーするには,湯流れ解析を従来以上に活用することが求められる。 本稿では,製品機能と生産性を両立する世界一軽量なダイカスト製品を,実現可能な限界薄肉の鋳造性を事前検証できる技術の確立を目指した。ダイカスト鋳造は,数十ミリ秒間で溶湯を製品形状に流し込むため,薄肉形状の成形に有利な工法である反面,検証技術の確立で不可欠な湯流れ(溶湯が金型内を流動する現象を指す)の実態を把握する技術的難易度が高い。そのため,ゼロベースで技術的難易度を高めている要件を洗い出し,金型設計技術で解決すべき課題を明確にする。 No.35(2018)for Thin Wall Die-Casting 1. はじめに

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