以上,Fig. 5及びFig. 6に記した金型構造上の制約を満たした上で,最大限に広い像を撮るために構造解析を繰り返し,柱の設計仕様の最適解を導いた(Fig. 7)。 -114- 柱の幅を細く設計すると,像の視認性が向上する反面,Fig. 4は,固定型内に観察窓とそれに続くトンネルを設け,像を転写するための鏡面を設置する構造を示す。観察窓の寸法は102mm×86mmとした。 関係をFig. 5に示す。 バックアップとしての強度が低下する。柱の高さは,ダイカストマシンに搭載できる固定型の厚みを最大にとり,可視窓構造部の厚みを除いた寸法で決める。柱の高さを増すとバックアップの強度が向上する反面,トンネル内に設置する鏡面の全長を短くする必要が生じる。鏡面の全長×cos45°が像の幅となるため,柱の高さを増すと像の幅が狭くなる。この関係性をFig. 6にまとめた。 Fig. 4 Die Design for Die-cast Visualization Fig. 5 Relationship of Design Parameter of Pillar and Fig. 6 Relationship Design Value of Pillar and Image Image (Cover Die) マツダ技報 撮像する方向に制約があるため,本稿は型開き方向に対して鉛直方向から撮像可能な金型構造を新たに考案した。可動型は,鋳造後の製品を取り出すエジェクター機構が可視化を阻害するため,可視化するための機構は,固定側に設置することとした。 ダイカストを可視化する上で,照度の不足が問題となる。その理由は,数十ミリ秒間で充填が完了するダイカストの場合,ハイスピードカメラのような1000分の1秒オーダーで記録できる機器が必要となる。一般的に,そのフレームレートで撮像するには1000ルクス程度の照度が必要である。ダイカストマシン周囲の照明だけでは,金型内に掘り込んだトンネルにこの照度を確保することが困難である。 本稿は0.03秒で充填完了する試験片形状であり,湯流れ解析で分析する充填2%刻みのコマ割りという考え方の下2000分の1のフレームレートで撮像した。そのため,照度を確保するための構造を新たに考案し,可視化金型の設計に織り込んだ。光源は金型内部に設置する方法が考えられるが,光源そのものが鏡面体構造に映り込んで像を阻害する。そこで,金型外部に光源を設けて反射板によって散乱光をトンネル内で拡散させた。 観察窓材には,アクリルを採用した。可視化実験で広く用いられる石英ガラスは製作費が高く,金型の熱間膨張による破損リスクを鑑みて,消耗品であると割り切った。ただし,アクリルは溶湯からの熱によって表面が溶けだし実験の再現性が損なわれやすい。そのため,観察窓の交換によって鋳造サイクルを阻害しないように,型開き時状態で観察窓を交換できる構造とした。 また,溶湯射出時の衝撃力と鋳造圧によって,観察窓を破損させないための構造を金型設計に織り込んだ。それは,“バックアップ機構”と呼び,観察窓を格子状の柱で背面より支持する構造である。この柱は,縦・横寸法を等しくした正方形窓を構成し,柱の設計値と像とのNo.35(2018)
元のページ ../index.html#121