マツダ技報 2018 No.35
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Fig. 18に,本実験の鋳造品を示す。当初のねらいどお 6.2 湯まわり性検証技術の開発 湯まわり性の検証技術をつくる上で,既製品ソフトウ −𝑖𝑖 -118- 初期値より大きく(粘りが出る)した方が整合率が改善することが分かった。 背圧を考慮する気体の状態方程式は式(2)のようになり,質量項mは式(3)で算出される。 p:Back pressure R:Avogadro’s number T:Temperature ∂m𝜕𝑡 = ∑𝑚𝑣,𝑖̇∶Gas mass from vent per second ‥a 𝑚𝑣,𝑖̇𝑚̇𝑣,𝑗 ∶Gas mass into Cavity per second ‥b マツダが使用する湯流れ解析では,キャビティー内の減圧設定項目を調整すると式(3)-aが変更され,ナビエ・ストークス方程式計算へ反映される。以上,溶湯の動粘性係数と金型内の減圧量の合わせこみを進めた結果,活動前の湯流れ解析整合率が52%であったのに対し,82%まで改善することができた(Fig. 16)。 湯先の挙動を再現できたことにより,実際の鋳造品での表面性状品質がどのような湯流れを経て発現したかの考察が可能となった。そこで,製品への溶湯充填状態の解析情報を基に,湯まわり性を検証するための新技術開発を進めた。 式(1)の③では,射出動作中のキャビティー減圧量をTable 1の実験条件ごとで調整した。③を算出する上で,Fig. 16 Calculation Accuracy for Filling Simulation(overall) 6.1 極薄肉シリンダーブロックの鋳造 鋳造プロセスにおける湯まわり性に関連する各工程の入力と出力を明確にするため,金型を用いた鋳造実験を実施した。金型は,SKYACTIV-Gシリンダーブロックの量産金型を改造した実験型を用いた。 実験対象とした部位は,現状で製品の基本肉厚で設計するシリンダーボア外周に冷却水を通す機能をもつ“ウォータージャケット”外壁とした。それは,同部位は製品形状に広くまたがり,薄肉形状であるために湯まわり性の感度が高いと考えたからである(Fig. 17)。肉厚の水準は,従来設計での2.5mmに対し0.3mmと0.7mmの2水準とした。それは,金型製作精度を考慮して最小の隙間である0.3mmと,検証技術を構築する上で湯まわり品質を段階的につくる目的で経験的に0.7mmとした。 りの品質ができており,成形品の肉厚は0.3mmねらいに対して0.30~0.35mm,0.7mmに対して0.71~0.73mmであった。 ェアの計算ロジックを,ユーザー側で編集できるものはおそらく存在しない。そのため,本稿では湯流れ解析で出力する結果を説明変数とする回帰式を作成した。 初めに目的変数を定義する。それは,湯まわり性を定量的に表現する必要があり,本稿では“湯まわり値”と呼ぶ指標を新たに作成した。それは湯まわり性を百分率で表し,材料の充填密度,光沢のRGB値,導電率を掛けあわせて算出する,マツダで独自に考案した数値であり,は,前節で鋳造したシリンダーブロックのウォータージャケット外壁肉厚の湯まわり値を網羅的に調べた。 マツダ技報 V:Volume m:Gas mass + ∑𝑚𝑣,𝑗̇ (3) 𝑝 ×𝑉=𝑚 ∙𝑅 ∙𝑇 (2) Fig. 17 Target of Thin Walled Experiment 100%に近づくほど良好な湯まわり状態と定義する。まずFig. 18 Test Sample 6. 湯まわり性検証技術の開発 No.35(2018)

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