マツダ技報 2018 No.35
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-11- Before Submerging 3.1 冷却水流れの予測精度改善 従来の温度予測は高負荷運転時の信頼性検討を主としZinc Iodide Solution Fig. 3 Experiment of Index Matching PIV After Submerging Velocity DistributionVelocity Distribution between CFD and PIV Fig. 5 Flow Behavior and Velocity Distribution (a) PIV Measurement (b) Initial CFD Calculation (c) Improved CFD Calculation Fig. 4 Comparison of Cylinder BlockNo.35(2018) マツダ技報 伝導計算と冷却水流れ・熱伝達計算を連成する解析技術を構築した。 ており,熱負荷の高い運転条件と高温部位は、ある程度限定することができていた。このため,冷却水流れの予測を行う際には,その運転条件における高温部位の壁温と周辺の流速,及び熱伝達率との相関関係を把握できることが重要であった。 しかし,高効率燃焼の安定性確保や,エンジン油温コントロールなど,燃費に関連する機能を強化するための壁温管理部位は,エンジン本体の信頼性におけるそれとは異なることが考えられる。また,温度管理が必要なエンジン運転条件や冷却水流量の範囲が従来よりも大幅に広がっている。このため,ウオータージャケット内の局所的な流れだけでなく,流路内の全体的な流れを幅広い流量範囲で精度よく計算する必要があり,CFDの計算精度を検証する実験においても,複雑な形状のウオータージャケット内の全体的な流速分布の計測が必要であった。 そこで,ウオータージャケット内の流れをPIV(Particle Image Velocimetry)により可視化し,全体的な流速分布をCFDと比較することで,解析の問題点を明確にして精度を改善する活動に取り組んだ。 る粒子の像が歪んでしまい,解析精度が低下するという課題がある。これを解決するため,Fig. 3に示すように流路の材料であるアクリルと同等の屈折率をもつ溶液中にウオータージャケット流路を浸し,屈折を相殺することで内部の画像の歪みを抑制するIndex Matching法を用いたPIV計測を行った(3)。 上記の手法で計測したシリンダーブロック部の流速分布とCFD解析結果を,Fig. 4(a),Fig. 4(b)に示す。CFDPIV計測を行う上で,ウオータージャケットのような複雑な形状は,湾曲する表面形状による屈折で,撮影す解析には,汎用流体解析プログラムICONCFD®を用いた。CFDで求めたシリンダーブロック内の流速分布は,流速の高い領域が広がらずに下流に流れており,この点で計算と実測の差が大きいことが分かる。流速分布の広がりの差は断面C以降で発生しているため,その上流のシリンダーブロック入口付近の流れの様子に着目した(Fig. 5)。断面Cの直前で流れが壁面に衝突し,その後流れが広がらない状態で下流に向かって流れていることが分かる。このことから,シリンダーブロック入口付近の流れの衝突挙動が,予測精度に大きく影響すると推測した。

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