マツダ技報 2018 No.35
19/149

次に,壁面衝突・分岐流れの精度について検討した。ここでは,Fig. 8に示すT字型流路で分岐出口に同一な条件を与えたモデルを用い,対称な形状,条件における流れの対称性の計算精度を検証する。 -12- シリンダーヘッドの比較結果をFig. 9に示す。シリンダーヘッド内の流速分布も, PIVとCFDでよく一致していることが分かる。断面内で分岐している流路ごとの流の計算精度に課題があることが分かった。 この改善のためメッシュ分割数を倍程度にすると,全体的に衝突後の対称性は改善するが,循環領域の流れの非対称性が残ることが分かった(Fig. 8(b))。そこで,複雑な流れ場に対するセル面の直交性を確保しやすいポリへドラル(多面体)セルを用いて計算を行った。その結果をFig. 8(c)に示す。流れがほぼ対称になり,衝突・分岐流れに対してメッシュタイプや分割数の選択による数値誤差の低減が有効であることが分かった。 以上の知見を適用したウオータージャケット改善モデルの計算結果Fig. 4(c)と実験Fig. 4(a)を比較すると,断面C以降で流速の速い領域が徐々に広がりながらブロック上部に向かって流れる様子が解析でも計算されており,実測とよく一致していることが分かる。 量配分も比較しているが,これについても実験と解析は良好な一致を示した。 Fig. 6 Flow Complexity at the Inlet of Water Jacket (a) Without Pump (b) With Pump Fig. 7 Comparison of Flow with/without Water Pump Fig. 8 Improvement in T-Split Flow Calculation Fig. 9 Comparison of Cylinder Head Flow (a) Base Mesh Resolution (b) Increased Resolution (c) Polyhedral Mesh Between CFD and PIV マツダ技報 付近の流れに課題があることが分かった。シリンダーブロック内の流れは,Fig. 6に示すようにまず入口で ウオーターポンプのインペラ形状とその回転の影響を受けて流入する。その後,シリンダーの壁面に衝突,分岐し,それ以降も壁面への衝突を繰り返すことで流れの広がり方が決まってくる。 以上より,ウオーターポンプからの流れと,壁面衝突時の流れの挙動が流れの予測精度に対して重要と考え,これらに着目したモデル改善を行った。 ウオーターポンプから吐出される流れを再現するために,インペラの詳細形状を考慮し,その回転による運動量の増加をMRF(Multiple Reference Frame)(4) によりモデル化した。モデル化の有無による流れの差を流線で比較した結果を示す(Fig. 7)。ポンプを考慮することによりシリンダーブロック内の流線は上下方向に広がっており,ポンプが流れに大きく影響していることが分かる。 これより,分岐部の再循環領域や,衝突後の分岐流れが対称にならず,流れ場がメッシュパターンに依存することが確認され,単純な形状においても衝突・分岐の流れPIVによる検証により,ウオータージャケット内の流れ計算において,最上流であるシリンダーブロック入口Fig. 4(b)で示した計算のシリンダーブロック内のメッシュ分割は10程度のため,まず同等の分割数で計算を行った。このとき,メッシュを分岐流路に対して傾けた状態のヘキサ(立方体)セルを用いている。Fig. 8(a)に計算結果を流線で示す。流線の色は流速に対応している。No.35(2018)

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る