マツダ技報 2018 No.35
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3.2 車体振動特性との関係 エンジン次数起振力に対しては,車両の各システムの共振配置が非常に重要となる。通常の4気筒運転のみの車両では,主要システムの共振周波数をエンジンのアイドリング回転速度(~800rpm=~27Hz)と走行回転速度(1000rpm~=33Hz~)の間に配置し,エンジン次数起振力でこれらの共振が励起されないようにしている。 -16- 気筒休止運転時の車体振動の課題を以下の3経路で述べ3.1 起振力の変化 まず,気筒休止時は,燃焼次数が回転2次成分から1次成分に半減し,非常に低周波の起振力となる。また,4気筒運転時と同一のエンジントルクを発生するために,1気筒あたりの燃焼負荷が増え,これに伴いトルク変動,吸気圧力変動はほぼ2倍に増加する(Fig. 2)。 Fig. 1 Fuel Consumption Characteristics Fig. 2 Engine Torque at 70Nm 1,500rpm Fig. 3 Alignment of Excitation and Main System 3001500600 1200 1800 2400 3000 600Engine speed[rpm]1200900Frequency close ofexcitationand system resonancedue to cylinder deactivation102030Resonance 180040Frequency[Hz]5060マツダ技報 気筒休止運転をすることで,エンジンから発生するトルク変動や吸気圧力変動を起振力とし,駆動系・エンジンマウント・サスペンション・ボンネットなどの多くの車両構造が反応する非常に広域の車両システム振動が発生する。 しかし,気筒休止運転では,起振力周波数の半減により,これまで離間配置していた共振が励起される。起振力周波数と各主要システムの共振配置をFig. 3に示す。気筒休止運転では,従来の周波数離間配置が容易ではないことが分かる。 2nd order1st order4cyl. Excitation2cyl. Excitation(1)DrivelineFr.suspensionPowertrain rollGlobal bendingParts AParts BParts CBonnet(2)(3)る。 (1) 駆動系経路の振動 通常の4気筒でも低回転運転時は,エンジントルク変動により駆動系ねじり共振が励起され,サスペンションを介して車体に伝達される。このため駆動系ねじり共振をエンジンの走行回転速度以下に配置している。気筒休止の場合は起振力周波数が半減し,駆動系,及びサスペンション共振域に入り込んでくる。 (2) エンジンマウント経路の振動 同様に起振力周波数の半減は,パワートレインのロール共振にも近接する。起振力はロール共振峰までは低下しないが共振のすそ野を励起し,その振動が車体に入力される。特に,上下方向の入力に対しては,車体骨格系の上下曲げ共振の感度が高く,これを励起しやすいことと,車両付加部品が上下方向にシステム共振をもつものが多いため,車体振動となりやすい。 (3) 吸気圧力変動による車体振動 エンジンの吸気においても,吸気口付近に発生する圧力変動起振力周波数が半減する。これがボンネット共振に近接し,ボンネット振動が励起され,車体振動の要因となる。 これら起振力・共振周波数の近接による車体振動の悪化を前モデル仕様のフルビークルモデルで,予測・分析した(Fig. 4)。 この結果,エンジンの常用回転速度である1200~1800rpm領域において,車体振動は5~20dBの大幅な改善が必要であることを確認した。 No.35(2018)3. 車体振動の課題

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