マツダ技報 2018 No.35
29/149

■■■■■■■■12■v■2■P■■vaxdS この車両全体の運動エネルギー損失量とCdの相関を確認した結果をFig. 3に示す。N=4ではあるが,相関が高く,空気抵抗の代用特性として使用可能であることを確認した。 自動車が高速で走行する際,自動車が空気になす仕事量は速度vと抵抗Dとの積Dvであり,そのエネルギーはいったん空気の運動となるが,最終的には熱となって消散する。その結果,空気には圧力の低下が生じる。Fig. 1に示すように断面積Sの風洞に自動車を固定して風を速度vで流せば,実走状態と相対的な流れは同一でDvのエネルギーが消耗される。上流断面aと下流断面bが自動車から十分離れていて,速度が一様になっている場合,風流れの運動エネルギーEの損失量はDvと等価であり式(1)で表すことができる。 ② 混合渦:異なる流れが合流して発生する渦…タイヤ ③ 後流渦:物体後方で上面下面側面それぞれの流れが -22- ■■■■■■v■■■P■■v■■dS (3) 2.2 風流れ制御の考え方 流体の運動エネルギーは粘性と速度差(速度と方向)に(2)となる。 流れの運動エネルギー損失量を求めると式(3)となる。 この式(3)を用いて,車両の前端の断面から,車両後方の運動エネルギーの減少がほぼなくなった断面までの風流れの運動エネルギーの損失を見たグラフがFig. 2である。このグラフに示すように,各断面までの風流れの運動エネルギーの損失量を見て取れる。このグラフを基に,車両のエネルギー損失を前方から輪切り分割し,各断面間での運動エネルギー損失量を算出することができる。 よって熱に変換されるため,運動エネルギー損失量を低減するには,車両周りの流れの風速・風向を沿った流れにする(式(3): 速度v,静圧P,主流方向速度vxの変化を小さくする)こと,すなわち渦を抑制することがポイントである。風流れの運動エネルギー損失を発生させる渦は,以下3つに大別できる。 ① 剥離渦:物体からの剥離により発生する渦…Aピラー ・アンダーフロア 周り・エンジン冷却風出口 合流して発生する渦…車体後部・ドアミラー 従来車において,「剥離渦」「混合渦」「後流渦」が Fig. 1 Flow around Vehicle Fig. 2 Kinetic Energy of Flow around Vehicle Fig. 3 Comparison between Kinetic Energy Results and Cd Results マツダ技報 クラストップレベルの空力性能と空力騒音を実現する風流れ制御技術を手に入れた。 本稿では,風流れの運動エネルギー損失量に基づく解析手法を適用した次世代商品群の空力開発プロセスとその具体的な制御技術について述べる。 れの運動量の指標を用いた解析方法が多く用いられている(1) (2)。しかし,運動量の指標では,速度の増減のみで運動量が変化した場合,見かけ上変化するだけで,速度が元に戻ると運動量も元に戻るため,現象の本質を捉えられていない。そのため,空気抵抗の各ユニットへの目標配分ができないという問題が生じる。また,車両の前端から後端までの流れで運動量が決まるため,後流の現象と流れの運動量のつながりが分からない。 そこで,内部流れの圧力損失を用いた運動エネルギー損失の考え方(3)にヒントを得て,外部流である空気抵抗に圧力損失(運動エネルギー損失)の考え方を用いることを考えた。風流れの運動エネルギーであれば,各ユニットに対しての運動エネルギー損失量が定量化でき,後流の現象とのつながりも分かるため,空気抵抗の各ユニットへの目標設定に使用することができると考えた。 ここで運動エネルギー量Eは総圧と流量の積で表され2.1 空気抵抗の各ユニットへの目標配分 空気抵抗の流れ場を定量的に解析する手法として,流No.35(2018)2. 次世代商品群の空力開発 Dv■■■■■■ (1) るので,それぞれ速度v,静圧P,密度■で表現すると式E■■■■■■v■■P■v■dS (2) ただし,vx:主流方向速度である。この式(2)から風

元のページ  ../index.html#29

このブックを見る