マツダ技報 2018 No.35
30/149

3.1 剥離渦:アンダーフロア アンダーフロア周りで発生する剥離渦を抑制し,エネ 3.2 剥離渦:Aピラー・後流渦:ドアミラー -23- ①Tunnel Cover ②Rr. Sus. Cover ルギー損失量を低減する風流れ制御の考え方に基づいて,以下 3.1~3.4の制御技術の具体例について述べる。 ルギー損失量を低減するために検討した実例を述べる。 まず,フロアアンダーカバーでフロア表面の平滑度で圧力勾配を制御し速度差を小さくした。 特に制御の難しい箇所に,①トンネル部分には排気管周りの冷却風を確保するための排出口を設定したカバー ②リアサスペンション部には整流する機能を持たせたカバー ③サイレンサー周りには整流のためにフィンを設定 (Fig. 6)することによって速度差を小さくし (Fig. 7),アンダーフロア周りの剥離渦のエネルギー損失量を低減することができた。 キャビン周りで発生するエネルギー損失量は空気抵抗になるだけでなく,一部が空力騒音となって車体を伝搬し,乗員に騒音として伝わる。車室内の快適性向上のためには,乗員への寄与が高いAピラーとドアミラーで発生する渦を抑制し,空力騒音を低減する必要がある。Aピラーの渦は,下流に向かって圧力が増加する過程で発生するため,圧力勾配を制御することで剥離渦を抑制できる (Fig. 8)。ドアミラーの渦は,後端での速度差を減らすことで,流れのせん断や巻き込みが低減され,後流渦を低減できる (Fig. 9)。また,渦をコントロールする各形状因子の寄与度を調べるため,それぞれの部位で単マツダ技報 3.1 アンダーフロアで発生する剥離渦 3.2 キャビンで発生する剥離渦とミラーの後流渦 3.3 タイヤ周りで発生する混合渦 3.4 車両後端で発生する後流渦 Fig. 6 Aerodynamics Optimization around Floor Fig. 7 Flow Stream Line around Floor Fig. 4 Kinetic Energy Loss at Each Part of Vehicle Fig. 5 Flow Structure around Vehicle Mixing Vortices Separation Vortices Wake Vortices Separation Vortices ①Tunnel Cover ②Rear Suspension Cover ③Silencer Cover ③Silencer Cover 3. 風流れ制御技術 No.35(2018) 主に発生している部位とその車両全体の運動エネルギー損失に対する割合をFig. 4に示す。これらの渦を抑制する制御技術を用いて運動エネルギー損失量を低減する。 これまでの研究(4) (5)から明らかになった「空気抵抗の発生要因となる渦構造の抑制の考え方(Fig. 5)」に風流れの運動エネルギー損失の考え方を融合させ進化させた。 車両周りの各部位の「剥離渦」と「混合渦」を抑制することで,各部位の「風流れの運動エネルギー損失量」を低減しつつ,その結果,車両後端での速度差を小さくし,車両後方の「後流渦」を弱める。加えて,車両後端での上下左右の速度差を制御することで更に後流渦を弱め,後流渦の「風流れの運動エネルギー損失量」も低減し,車両トータルで「風流れの運動エネルギー損失量」を低減する。 これをどのような車両でも,つまり,車形が変わっても,車高が変わっても,それぞれの渦を同じ考え方の技術で制御することで,個別車両で相似形のような風流れを実現した。 この「風流れの運動エネルギー損失量」を低減する風流れ制御の肝は「剥離渦」は圧力勾配を制御して,物体表面に沿わせる(速度差を小さくする)こと,「混合渦」と「後流渦」は圧力勾配を制御して合流する流れの速度差を小さくすることである。 本章以降では,これまで述べてきた風流れの運動エネ

元のページ  ../index.html#30

このブックを見る