マツダ技報 2018 No.35
35/149

-28- ・Large size slag on the bead・Thin e-coating ・Reduced slag size and height ・Thick e-coating Previous process (A) Normal Burr 2.3 改善方針 見栄え錆とは,信頼性に影響しない,市場走行後早期(B) Enormous Burr し,溶接ビード部にスラグが生成される。大量生産に適すMAG溶接では,シールドガス中に多量の酸素成分を含むため,スラグを完全になくすことは極めて困難である。 一方で前述のとおり,スラグによる電着塗膜の不完全部を起点とし発錆する。後工程でスラグを完全に除去することは,狭隘部分の多い足廻り部品では困難であり,防錆性能向上には,スラグ生成量の抑制が効果的である。 スラグ生成は以下の化学式で示される。 (Si / Mn)+O2 → (SiO2 / MnO) 金属添加元素のSi,Mn等の易酸化性元素量を個別にコントロールすることは,量産の多種多様な材料に対しては困難なため,シールドガス中の二酸化炭素に代表される酸素成分を抑制することでスラグ生成量を抑制する。 マツダと(株)神戸製鋼所で開発した「ハイアルゴン溶接」(1)により,通常に比べて極めて低い二酸化炭素量での溶接施工性を確保し,電着塗装で被覆可能なスラグ量・サイズとすることが可能となった(Fig. 7)。 Fig. 5 Appearance of Edge(2) Hi-Argon process On the welding 3.1 溶接ビードの改善(低スラグ化) 溶接には,母材の強度を上げる目的と,溶融金属内部の酸素を外部に排出する目的で添加元素,Si,Mnが必要である。これらがアーク熱により周辺の酸素成分と反応Slag Steel Sheet Just after coating Slag Steel Sheet On the edge Just after coating Steel Sheet e-coating e-coating Hardening (Flow) e-coating Hardening (Flow) Fig. 6 Mechanism of Painting Flow After hardening After hardening マツダ技報 は,電着塗膜は外観品質やボルト締結性から一定の平滑性が求められるため,焼き付け時に一旦粘性が下がり,流動して平滑になる性質「フロー性」を有すためである。更に,プレス加工後のエッジ部には通常,バリが生じるため,更に被覆性が悪化する。Fig. 5にエッジ部の詳細形状を示す。(A)に通常のバリを,(B)に大きなバリを示す。両方ともにエッジ部頂点の膜厚が他の部位に比べ薄くなっている。 に生じる軽微な錆を指す。 従来,信頼性を重視した防錆技術開発を行っており,見栄え錆は許容してきたが,今後は,お客様に愛される車を実現するために,見栄え錆を性能ととらえ,発錆ゼロの期間を重視した開発とする。これにより,経年錆による信頼性劣化も改善できる。 以下にそれぞれの弱点部位の改善方針を述べる。 溶接ビード上の耐食性改善には,スラグを縮小することが効果的であり,究極はスラグをなくすことである。しかし現実には,コストと生産性を両立しながら,スラグをゼロにすることは極めて難しい。 スラグを極小化した上で,電着塗膜のフロー性を高める,もしくは,電着塗膜を厚くし,塗料がフローする時の流動する量を増やすことでスラグをカバーする考え方で改善する。 (2) エッジ部 エッジ部の耐食性を改善するためには,エッジ部のバリ部を塗膜で覆うことが重要である。被塗物側のバリ高さを,全ての部位である一定値以下に管理することは,量産時の金型管理を考慮すると現実的でないため,電着塗料の改良で対応することを考えた。ここで,Fig. 6に溶接ビード上のスラグ部とエッジ部の被覆性の模式図を示す。スラグの被覆にはスラグサイズの縮小,電着塗装の塗膜厚さとフロー性を高める必要があるのに対して,エッジの被覆にはフロー性を抑制する必要がある。 この背反を両立する塗料開発が必要である。 (2) エッジ部は,電着直後のウェット膜状態では被覆されているが,焼き付け工程で被覆性が悪化する。これ(1) 溶接ビード上のスラグ No.35(2018)3. 要素技術開発と車両適用開発

元のページ  ../index.html#35

このブックを見る