マツダ技報 2018 No.35
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-30- 3.3 電着塗装の厚膜化 厚膜化対応を行うにあたり,4つの制御因子(電圧,電極面積,浴温,溶剤量)を選定し,これらの寄与を評価 Fig. 13に実車促進腐食試験後の部品外観写真を示す。 実線部:溶接ビード,破線部:エッジを示す。従来塗 3.4 塗膜耐食性短期評価技術(2)の適用 塗装部の防錆品質の造り込みには,被塗物と塗膜双方 従来背反を解けなかった,溶接ビード上とエッジ部の20μm Hi-Argon Welding Process Fig. 11 Result of Combined Cycle Corrosion Test E-coating Thickness 30μm (30cycle) Fig. 12 Appearance of Sus-crossmember Conventional process by New Anti-corrosion Process Development process Fig. 13 Appearance of Sus-crossmember after Vehicle Corrosion Test 5. おわりに マツダ技報 した。この中で,電圧は上げ過ぎると亜鉛メッキ鋼板に対して,ガスピンと呼ばれる針孔状のピンホールが発生しやすくなることが知られているため制御幅が少なく,浴温も省エネルギーの観点から上昇は最小限に留めたいため,電極面積と溶剤量をメインのパラメーターとして,ラボテストとライントライを実施し,電極の追加本数と溶剤の増加量を決定した。溶剤については成分の見直しも行い,最適な配合にすることで電着塗料のロバスト性を上げ,結果として設備は電極追加のみで対応が可能となった。 溶剤量を上げる懸念点として,付きまわり性の低下,及び,エッジ部被覆性の低下が考えられたが,付きまわり性については,足廻り部品は比較的単純な断面で,電着に必要な穴も十分確保できていること,そして,電流値を上げる対策実施により,断面内に現状同等の膜厚が確保できた。エッジ部については,粘性増大による被覆性向上効果を妨げない条件を確認し,溶剤配合を決定した。 の極めて多岐にわたる耐食性影響因子を精度良く制御することが不可欠である。従来,複雑なこれらの因子を制御して品質確立するために実腐食試験が用いられてきた。実腐食試験は対象物を発錆させ,その状態を定性評価する試験であり,長いものでは半年以上の試験期間が必要である。従って,防錆品質の造り込みにはおのずと長期の開発期間が必要で,車両開発期間短縮のネック項目のひとつであった。 この課題を塗膜耐食性短期評価技術により克服した。本評価技術は極めて短時間(従来3か月⇒約5分)に精度良く実部品のさまざまな部位の耐食性を直接定量化することができる。 この技術を新電着塗料の開発に活用し,従来より開発期間を大幅に短縮できた。 ここまでに検証してきた,見栄え錆改善技術を量産部品に織り込み(Fig. 12),実車促進腐食試験を実施した。部品仕様は以下とした。 ・電着膜厚(一般部のねらい膜厚):35μm ・粘性:仕様B(Table 2) ・被塗物側:ハイアルゴン溶接(Ar+5%CO2) ・被塗物側の鋼板材料は量産品 装と比較し,大幅に発錆を抑制することができた。 見栄え錆の原因である溶接ビード部,エッジ部に対して,電着塗装の改善,厚膜化,被塗物のスラグ極小化の組み合わせで耐食性を大幅に改善し,その開発の過程で以下の知見を得た。 防錆性能の両立を,以下の考えで解決した。 No.35(2018)4. 実部品への適用と防錆評価結果

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