マツダ技報 2018 No.35
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① Cervical Curvature(CC): ② Thoracic Kyphosis(TK): 第2頸椎(C2)-第7頸椎(C7)角度(7) ③ Thoracolumbar Kyphosis(TLK): ④ Lumbar Lordosis(LL): ⑥ Pelvic angle(PA): 第10胸椎(T10)-第2腰椎(L2)角度(8) 第1腰椎(L1)-第5腰椎(L5)角度(7, 9) ※①~④の各角度について+を前弯(前方に湾曲),-を後弯(後方に湾曲)とする。また,⑤は仙骨の上面が水平線より上の場合を前傾,⑥はASIS-恥骨結合の線が垂線より前の場合を前傾と定義する。 -46- 2.3 角度データ分析 脊椎及び骨盤について,7項目の角度計測を実施した。脊椎部(Spine)は,①頸椎,②胸椎,③胸腰椎,④腰椎について最上位椎体の上端に平行な線と最下位椎体の手置き棒に手をのせて,普段の運転姿勢を取って着座してもらった。年齢・身長・BMI ごとに被験者層の範囲を3層に分け,データに偏りが生じないよう配慮の上,75 名分の撮像データを取得した。撮影は山口大学医学部附属病院放射線部が所有する装置(SONIALVISION Safire17 SHIMADZU)を使用し,座位・立位・臥位について撮影した(Fig. 2)。 下端に平行な線から成る角度を計測した。また骨盤部(Pelvis)は,⑤仙骨と骨盤に対してその上端に平行な線と水平線から成る角度,及び⑥上前腸骨棘(Anterior-Superior Iliac Spine; ASIS)と恥骨結合を結ぶ線と垂線から成る角度について計測を行った。各角度の略称を以下に示す。また,角度の簡略図をFig. 3に示す。 仙骨(Sacrum)と水平線の角度(7, 9) 2.2 研究倫理 本研究は,山口大学及びマツダ(株)の研究倫理委員会にて承認を得た上で,被験協力者に説明を行い本人の参加同意を書面で確認し,撮影に臨んだ。 第5胸椎(T5)-第12胸椎(T12)角度(7) ASIS-恥骨結合と垂線の角度(10) Fig. 1 Situation Which Lap Belt is Put on the Pelvis in Dummy Fig. 2 X-ray Facility and Situations of X-raying ⑤ Sacral Slope(SS): マツダ技報 2.1 レントゲン撮影 レントゲン撮影用にアクセラシートを取り付けた治具をFig. 2に示す。シートバック24°,座面21.5°に固定し,シートスライド機能及び持ち手位置は調節可能としマツダ車が関係した交通事故での死亡重傷者を低減するための安全技術を確立すべく開発を行っている。これには,実際の市場事故の現状を把握し,内在する課題を明らかにすることや,人体そのものについて理解し,事故時の受傷発生メカニズムを正しく認識することが重要である。 部位別の比較において死亡者の割合は頭部・胸部が多いが,重傷者を含めると特に日本では腹部が大きな割合を占めている。その要因の一つとして,シートベルトが考えられる。自動車メーカーはシートベルトが腸骨にしっかりフィットするように設計しており,実際衝突用ダミーを用いた実験やシミュレーションでは衝突時も腰にしっかり掛かることは確認されている(Fig. 1)が,ヒトの骨格には個体差がありそれがどう影響するかを分析する必要がある。加えて,着座時の姿勢と骨格状態の関係も乗員の拘束性を考える上で把握する必要がある。正しい姿勢でシートに着座して,より快適な運転環境が実現すれば,自動車のダイナミック性能だけでなく安全性も確保されると考えている。 骨格アライメントについては,これまでさまざまな視点から立位及び座位骨格を対象にした研究がなされているが(1-6),実際に自動車シートを用いた研究,また幅広い年齢・体格を対象とした研究は少ない。今回,座位での人体骨格アライメントに注目し,その個体差を分析して人体FEモデルに反映させ,それらを用いて挙動解析を行った。また,次世代用に開発したシートについてマツダが考える理想の着座姿勢が実現できているかレントゲン撮影により確認を行ったので,報告する。 た。撮影に際し,被験者にはフットレストに足を置き,No.35(2018)1. はじめに 2. 実験方法

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