マツダ技報 2018 No.35
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-47- 2.4 人体FEモデル作成及びシミュレーション 腸骨へのシートベルトの掛かり方と骨盤周りの挙動について分析を行うため,得られた角度のうち⑥PAについて正規分布図を描き,50%ile(座位時のアライメントがS字タイプ),及び1%ile(座位時のPAが最も後傾するタイプ)の角度値を参考にTHUMS AM50 ver.4 の上肢,下肢,頸椎,寛骨臼付近の変位・回転を拘束し,腰椎及 この2つの角度が特に個体差の範囲が大きいことから,これら角度について年齢・性別・BMIとの相関を調べた。結果は,現状75名分のデータではいずれの因子とも強い相関性は見られなかった(Fig. 6)。 骨盤は,ASISの形状やASIS-PSIS(上後腸骨棘; Posterior-Superior Iliac Spine)間の長さ,ASISから恥骨結合までの距離に個体差がある。これらの因子はPAに影響を与える可能性があり,今後骨盤形状の個体差と年齢・性別・BMIとの関係性を調べる必要があると考えられる。 Fig. 3 Measurement Items for Spine and Pelvis Fig. 4 Two Types of Skeletal Alignment in Seated (a) Lumbar Lordosis (LL) (b) Pelvis Angle (PA) Fig. 5 Variability Range of Skeletal Alignment in Seated Posture Posture LLPA No.35(2018) 3.1 座位骨格アライメントの個体差 75名分の角度データを基に,座位骨格アライメントを分析すると,腰椎が前弯(Lordosis)し全体的に緩やかなS字を示すタイプと腰椎も後弯(Kyphosis)し脊椎全体が後弯したタイプに大別され,S字タイプはn=39,後弯タイプはn=36でいずれも約半数の割合となることが明らかとなった(Fig. 4)。更に,相対的に腰椎が前弯すると骨盤も前傾し,一方腰椎後弯では骨盤も後傾する傾向であった。 マツダ技報 び骨盤に強制変位・回転を与えてそれぞれの角度を再現したモデルを作成した。加えて,挙動の傾向比較を行うため,中間値として10%ileの角度値を再現したモデルも同様に作成した。これらのモデルを用いてJNCAP Full Lap前面衝突(衝突速度56km/h)のシミュレーションを行った。プリテンショナー及びロードリミッタリトラクタ機構付シートベルトを使用し,脊椎を改変した人体モデルを運転席に着座させ,車体及び他の内装はマツダの代表的なものを用いた。 また,男女別に骨格の各角度の個体差範囲を調べると,脊椎下部,特にLL及びPAでバラつきが大きく,前弯角及び前傾角度の最大値と最小値の差は約50°あることが分かった(Fig. 5)。 3. 結果及び考察

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