マツダ技報 2018 No.35
56/149

-49- 3.3 ダイナミック性能・安全性能を両立したシート (1) E.G. Daniel et al.: An analysis of sagittal spine alignment in 100 asymptomatic middle and older aged volunteers., SPINE, Vol.20, No.12, pp.1351-1358 (1995) (2) T. Brazier et al.: Sitting and standing postural analysis through car seat comfort considerations, SAE paper No. 2002-01-2060 (2002) (3) J.A. Pramudita et al.: Variation of spinal alignment in standing and automotive seated postures, IRCOBI Asia Conference, pp.28-29 (2016) (4) H.W.D. Hey et al.: How the spine differs in standing and in sitting–important considerations for correction of spinal deformity. The Spine Journal, Vol.17, pp.799-806 (2017) (5) M. Kathleen et al.: The influence of different sitting positions on cervical and lumbar posture, SPINE, Vol.21, No.1, pp.65-70 (1996) (6) H.W.D. Hey et al.: Differences in erect sitting and natural sitting spinal alignment - insights into a new paradigm and in deformity correction, The Spine Journal, Vol.17, pp.183-189 (2017) implications (a) Anterior Pelvic Tilt (b) Posterior Pelvic Tilt Fig. 9 Relationship between Engagement of Seatbelt and Loading to Ilium Fig. 10 Change of Skeletal Alignment between two Seats No.35(2018) 開発 次世代用に開発したシートは,「骨盤を正立させること」を目指し,それにより「自然な脊椎のS字を促し,腰椎も前弯を維持できる」ことをコンセプトとしている。これを実現することで,クルマのダイナミック性能が向上し,より「人馬一体」を感じられると考えている。加えて,快適性・安全性につながる正しい姿勢を自然に作り出すことも可能となる。このシートに着座した際の骨格アライメントを調べるため,レントゲン撮影を行った。その結果,アクセラシートにおいてそれぞれ座位S字タイプ,後弯タイプであった2名の被験者いずれでも骨盤(SS)が前傾傾向となり,それに伴う腰椎(LL)前弯が確認できた(Fig. 10)。 参考文献 マツダ技報 本研究において,自動車シートに着座した際の骨格アライメントのデータが収集され,データ分析から座位骨格アライメントは大きく分けて腰椎前弯を伴ったS字タイプと頸椎から腰椎まで全体的に後弯するタイプの2種類あることが分かった。現状データからは,角度と年齢・性別・BMIとの間に相関は見られなかった。 また,脊椎を修正した人体モデルによる挙動解析から,いずれもシートベルトは腸骨に掛かっていたが,PAが後傾になる程ずれ上がりが大きくなることが明らかとなり,乗員拘束性を考える上で骨盤を立て脊椎をS字に保つことが重要であると示された。 次世代用に開発されたシートは,この「骨盤を正立させ,それにより自然な脊椎のS字を作り出す」ことが確認できた。しかしながら,ダイナミック性能及び安全性能それぞれの観点で,長時間運転時の姿勢保持等取り組むべき研究も残っており,今後も「人間中心」の視点からシート形状や構造を追究していきたい。 本研究は,多くのボランティアの方に被験のご協力を頂いた。また,撮影・データ分析・モデル作成は,山口大学医学部附属病院整形外科の先生方や放射線部の診療放射線技師の皆様,工学部機械工学科の先生方のご協力により行った。 4. まとめ

元のページ  ../index.html#56

このブックを見る