マツダ技報 2018 No.35
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に -52- 衝突安全性能には,乗員保護性能や緊急脱出性能に加え,燃料系統の気密保持による火災防止性能がある。Fig. 1,2に示した燃料系統を,Fig. 3に示すようなさまざまな衝突モードで保護し,衝突後も気密性を保持して火災を防止することが必要である。 衝突時の燃料漏れ防止のためには,燃料タンクと周辺にレイアウトされた部品の干渉によるタンクの穴あきや,パイプの挟まれ,タンク内部のロールオーバーバルブの破損,タンク内部のホースやパイプの抜けなどを発生させないように,仕様を決定する必要がある。そのためには,Fig. 4に示すように,車体を構成するフレームやクロスメンバーなどのユニットの強度やFig. 3 に示したさまざまな衝突形態におけるユニットの圧潰するタイミング,順序,車体全体のエネルギー吸収量を精度良く見積もり,車両全体の挙動や,車体に固定される各ユニットの挙動,それらの変形の様相を設計段階で精度良く予測することが重要である。これらは構造体の変形や破壊のみを扱うため,メッシュサイズの詳細化,各ユニットの詳細な作り込み,過大入力による溶接点や部材の破断リスクの高精度な予測モデル化技術の構築などのCAE進化により高い精度で予測可能となった。しかし,衝突時の燃料タンクの挙動やタンク内部のバルブの破損は,衝突により揺動する燃料(流体)から受ける構造体の作用も考慮しなければならない。従来は過去の開発経験からの知見を織り込んで,タンク試作品での実機試験で検証してきたが,実機試験での問題検知と図面仕様の修正の進め方は,開発の最終段階での仕様変更を発生させ,短期開発や低コストの開発の実現のネックとなっていた。 (Fig. 5(c)),逆側の壁面まで移動して(Fig. 5(d))激し燃料タンクの挙動やタンク内部の機能部品の破損を精度良く予測するには,タンク内部の発生現象の見える化が重要である。停車している車両に別の車両が追突する現象を一例に説明すると,追突された車両のタンクは前側に加速されるが(Fig. 5(a)),内部の燃料は慣性力で,留まろうとするため,燃料は衝突側のタンク壁面を駆け上がり(Fig. 5(b)),その後に戻って渦を形成しながらく揺動する。それにより,タンク壁面へ入力が生じ,タンク本体が部分的に膨張したり,内部の機能部品が変形する。これらは閉ざされた空間内で,わずか0.1秒の間に起きる現象であるため(Fig. 6),定量的な現象把握が重要な課題である。 マツダ技報 Fig. 1 Vehicle Fuel System Baffle Plates Fig. 2 Fuel Tank Components Fig. 3 Crash Simulations Fig. 4 Under-body Structure Inner Pipe Connects to Canister Rollover valves 2. 衝突時の燃料系統の気密性保持に 向けた開発 3. 衝突時に燃料タンクの内部で 起きている現象 No.35(2018)

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