マツダ技報 2018 No.35
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マツダは,2020年に創業100周年を迎える。お客さまとの信頼関係を強め,従業員や地域に継続的に貢献するためには,永続することこそが企業の使命とも言えるが,100年続く企業は全体の3%にも満たない。一方,日本における100年企業は3万社を超え,200年以上続く世界の長寿企業の約半分は日本に存在するという。その理由は,内乱が少なく平和な地域が多かったことやM&Aなどの欧米とのビジネス慣習の違いなどがあげられるが,日本の長寿企業にはいくつかの共通点がある。 ② 伝統と変化 ― 1 ―顔写真 執行役員 工藤 秀俊 No.35(2018) マツダ技報 それは,①企業理念を愚直に遵守していること,②伝統を守りつつも時代に合わせて変化していることである。以降,この2つの観点からマツダの現状と今後の抱負を述べたい。 ① 企業理念の遵守 長寿企業の多くは,社会や地域貢献を柱とする企業理念を持ち,一貫性ある事業を通じて顧客からの信用を得て,不景気の時にこそ選ばれているという。これは,“工業で世界に貢献する”ことを目指した,我々の創業者の想いと同じであり,現在のマツダのコーポレートビジョンが目指すところとも一致している。そして昨年,マツダはコーポレートビジョンに沿った技術開発の長期ビジョン『サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030』を公表し,我々がクルマを造る目的・意義を改めて社内外に示した。“私たちマツダは、美しい地球と心豊かな人・社会の実現を使命と捉え、クルマの持つ価値により、人の心を元気にすることを追究し続けます”というメッセージには,生き様や真理の追究を精神の修練と捉える“道”の精神や,他者のために思いやりを持ち情熱を傾けることに生き甲斐を感じる“和”の精神が息づいており,それを走る歓びを中核に据えたクルマの価値で実現しようとする様はマツダらしくもありかつ日本的である。このような理念・哲学を持っていることをとても誇りに思う。 そのコーポレートビジョンはリーマンショック直後の2009年,その後に訪れるであろう未曽有の危機に耐えて生きのびるために,全社員の想いを揃えるべく改定に着手したものであった。そして,皆の想いを紡いだビジョンを額に入れて飾っておくのではなく,社員一人ひとりの行動の質を上げるための活動がブランド価値経営に他ならない。だからこそ開発の我々は,『人生の輝き』を提供するために『人間中心』でクルマを研究し,『地球や社会と永続的な共存』に向けた本質な課題解決のために理想の燃焼に向けた挑戦を続けているさまは,我々の強みになりつつあることを共通認識しておきたい。 今後も,創業時代から続く大義ある企業理念・開発哲学に基づき迷うことなく技術開発を行うしくみ作りを通して企業風土にまで高めることで,独自性と信用で選ばれる企業を目指していきたい。 長寿企業の他方の特徴は,伝統を守りつつ時代に応じた変化をすることで,時代や世代を超えて選ばれ続けている点である。我々が守るべき伝統は,前述の理念に基づく,しなやかな人馬一体感のあるエフォートレスなドライビングフィール,理想燃焼を追求する超高効率な内燃機関,そして見る人を惹きHidetoshi Kudou 次の100年に向けて… Towards next 100 years… 巻頭言

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