マツダ技報 2018 No.35
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① NH3の吸着・脱離 実機でのモデル精度検証結果 ④ また,吸着サイト数は当初1サイトでモデル構築を進めていたが,昇温中の出口NH3濃度の減衰が緩慢になる挙動から,温度に対する脱離特性が異なる複数の吸着サイトの存在が示唆され,最終的に3サイトでモデル化した。サイト数違いでのモデル精度検証結果の一例をFig. 7に示す。従来の1サイトモデルでは,3,500秒付近の濃度の減衰は直線的である一方,3サイトモデルでは温度に対する脱離特性が異なる山が重なることで精度が向上した。 -75- SCR内部でのNH3酸化反応をモデルに追加した。最終的に3つのNH3酸化反応式を考慮することで,高温領域でのNH3酸化に起因するNOX還元率の低下を再現できるようになった。NH3酸化を考慮する前後でのモデル検証結果をFig. 8に示す。 触媒単体評価にて構築したモデルの実機適用性を検証するために,SCRシステムを搭載した実機でのNOX実測値とモデル計算値の比較を行った。モデルには供給NH3量をコントロールするロジックを織り込んだ。このコントロールロジックには,NOX還元率・NH3酸化・NH3脱離及び目標NH3吸着量を考慮している。 この結果より,実機においても十分なモデル精度を確保しており,MBDへの適用性が確認できた(Fig. 9)。 ギゾーストマニホールドを採用していた。新型ではターボハウジングの耐熱性基準をUPさせることで,空冷式に変更し,熱損失を低減した。次に大ターボのハウジングを板金化した。可変容量機構部の精度や剛性確保が必要な部位は鋳物とし,熱損失の大きいガス通路については薄肉板材を採用した。鋳物と板金部は,TIG溶接にて一体化されている。板金ハウジング部は2重管化されており,昇温と保温性能機能を実現した(Fig. 10)。 Fig. 6 NH3 Adsorption and Desorption Model Accuracy, without H2O (left) and with H2O (right) Fig. 7 NH3 Adsorption and Desorption Model Accuracy ② NH3酸化反応とNOX還元反応 Fig. 8 NOX Reduction with NH3 Oxidation Model, without NH3 Oxidation(left) and with NH3 Oxidation(right) Fig. 9 WLTC SCR out NOx Model Accuracy 1site model 3site model No.35(2018) マツダ技報 Table 2に従い,まずNH3とN2のみを単体に流通させ,NH3吸着脱離の温度,空間速度(SV)違いに対する特性を得た。これに加え,NH3とH2Oはゼオライト上に競合吸着することからH2Oの吸着・脱離反応を新たにモデル化した。NH3吸着に対するH2Oの影響を考慮する前後でのモデル検証結果をFig. 6に示す。H2O吸着を考慮しない場合(左図)は実測に比べて脱離が不足し,NH3濃度が低く算出されるが,H2O吸着を考慮することで相対的に空き吸着サイト数に対するNH3吸着サイト数の割合が高くなり,脱離が促進されることで精度改善につながった。 NOX還元反応は前述した(1),(2),(3)式にてモデル構築を進めていたが,当該モデルだけでは高温域におけるNOXとNH3消費の挙動を正しく表現できなかったため,評価条件は,市場で使用頻度の高い運転条件より決定した。反応ごとに個別の単体性能評価を実施し,各反応モデルの活性化エネルギーなどの反応パラメータを同定した。同定した結果について下記に述べる。 5.1 排気システムでの熱損失低減 現行エンジンでは,シリンダーヘッド一体型の水冷エ5. 導入技術

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