マツダ技報 2018 No.35
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-76- Fig. 12 Comparison of NOX Conversion Characteristics 5.2 NO2生成能改善によるSCR反応促進 SCRにおけるNOX還元の総括反応は,4章に示した(1),(2),(3)式で表され,このうち(2)式はFast SCR反応と呼ばれ低温から反応速度が速く,またこの反応を促進するためには,SCR前ガスのNO2/NOX比率を50%程度にするのが有効であることが知られている。市街地走行のような排ガス温度が低い運転シーンでは,Fast SCR反応を促進することが有効である。そのために,SCR前ガスのNO2/NOX比率を改善させる設計を採用した。 ターボ下流のDOCコンバーターでは,入口部を2重管による空気断熱層構造とし,また板厚0.8mmのSUS材でターボとの締結部シール機能を併せもつ構造を採用した。 コンバーター出口部では,ディーゼルパティキュレートフィルター出口~SCR入口間の放熱低減のために保温カバーを採用した。 以上の施策により,SCR入口までの熱損失低減について,機能目標値を実現できた。 まずDOC容量を約20%UPし,空間速度を低下させた。またDOC触媒では,触媒劣化抑制とHC・COによるNO2消費の抑制及びNO2生成能改善をねらい,貴金属種の割合とウォッシュコート内部の貴金属配置を最適化した。実機での性能改善効果をFig. 11に示す。新設計のDOCにおいて,200℃以上の低温度域で約20~30%のNO2/NOX比率改善を実現した。ディーゼルパティキュレートフィルター触媒では,DOCで生成されたNO2の消費抑制のため,貴金属の高分散化及び活性O2量の最適化を行った。 5.3 SCR触媒種の選定 SCR触媒には,金属添加されたゼオライトタイプを採用した。添加金属とゼオライトについて,Table 3に示す二つの仕様にて,機能検証を実施した。触媒A及び触媒BのNH3吸着量とNOX浄化率の特性をFig. 12に示す。 SCR温度は180℃,市街地走行相当の空間速度での特性であり,図中の三角及び丸印は安定したNH3吸着量での浄化率を示す。NO2/NOX比率=25%の場合(三角印),触媒Aは内部にNH3をしっかりと吸着してNOX還元反応を行うのに対し,触媒Bでは少ないNH3吸着量で高いNOX浄化率を示す。NO2/NOX比率=0%の場合(丸印),触媒Bは触媒Aに対して浄化率の低下が著しく,SCRに流入するNO2/NOX比率に高く依存していることが分かる。 また関連する部品公差などを勘案したNH3吸着量のシステムバラツキ(System Tolerance)を,Fig. 12に示している。SCRシステムは,触媒内部のNH3吸着量を直接計測することができないため,NH3吸着量のバラツキに対してNOX浄化率が緩慢な特性をもつ触媒が望ましいが,触媒Bは浄化率変化が大きく,ロバスト性が劣る。 またゼオライトタイプのSCR触媒では,その多孔構造にHCが吸着し,SCRの機能を阻害することが報告されている(3)。吸着HCは,NH3の酸点への吸着を阻害し,またディーゼルパティキュレートフィルターの再生制御作動時のような高温ガスにより,吸着HCが一気に酸化した場合,酸化反応熱でゼオライトが破損するなど,耐久性の課題につながる。SCR用ゼオライトの改良が研究(4)され,孔径と気体分子の大きさから,SCRに適した材料選択が可能となっている(Fig. 13)。 Doped MetalTable 3 SCR Catalyst Specifications Catalyst A Metal A Structure I Zeolite Catalyst B Metal B Structure II マツダ技報 Fig. 10 Double Layer Sheet Metal Housing Technology Fig. 11 Improvement of NO Oxidation on DOC No.35(2018)

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