マツダ技報 2018 No.35
88/149

Engine side -81- 3.3 駆動系振動低減技術 エンジンの高回転化により往復慣性力が高まり,クラ1次共振は,エンジン側マスのイナーシャを最小化しフライホイール全体イナーシャを旧型同等に抑え周波数低 高回転化するとピストンリングの摺動速度が上がりシ機械抵抗の増加を招く。新型では,上下非対称形状を採用しオイル掻き落とし機能を高めたことで旧型比38%低い張力とし,抵抗低減とオイル消費低減の両立を実現 した。 ンク軸上の回転変動は増大する。また,低中速トルクの充実化により燃焼加振力は大きくなる。いずれの場合もトランスミッションへ入力されるトルク変動は増加し,駆動系異音の低減が課題となる。高回転・高出力化に伴って増大する駆動系異音の抑制と,スポーツカーにふさわしいパフォーマンスフィール性能(軽快レスポンス)維持という背反のブレークスルーのため,マニュアルトランスミッション車用に低イナーシャデュアルマスフライホイール(以下,低イナーシャDMF)を新規開発した。(Fig. 10) 一般に,トランスミッション歯打音に代表されるねじり系異音の応答レベルを低減する手段として,起振力低減(エンジン回転系マス増加),あるいは駆動系バネの剛性低減が挙げられる。しかし,いずれの手段もアクセル操作に対する車両加速応答の鈍化と駆動系振動の収束性の悪化を伴いレスポンス性能との背反を生じる。背反関係にある両性能を駆動系のねじり共振周波数をコントロールし両立を図った。具体的には,駆動系の振動収束性を支配するねじりの1次共振は旧型同等の周波数とし,駆動系異音を支配する2次共振は低周波化することで振動減衰性を向上させた。(Fig. 11) 下を抑制した。エンジン側イナーシャ低減に際しては,フライホイールの回転慣性エネルギーを蓄積するという基本の機能が減少する。MBDを活用してあらゆる運転シーンの検証を行い,部品仕様の選定とエンジン制御のFig. 8 Piston PreviousNormal HighSpeedFig. 9 Weight of Main Motion System PistonConnectingRodCrank ShaftNewTransmission side Fig. 10 Small Inertia DMF No.35(2018) 3.2 機械抵抗低減技術 高回転化に伴い増加する往復系の慣性力を最小化し,重1kgマツダ技報 量低減とエンジン振動低減,更に機械抵抗低減を実現するブレークスルー技術として主運動系部品を新開発した。特にピストンの慣性力はコンロッドとクランクシャフトに掛かるためピストン単体は10%以上の軽量化を実現し主運動系全体の軽量化を図った。 ピストンは,スカートの面積を旧型比30%小さくしながらシリンダー内のピストンの傾き運動を抑えるスカートプロファイルを新開発した。加えて,薄肉で高い剛性となるように燃焼室面裏とピストンピンボスを一体構造として最適化をすることで,燃焼室側の肉厚は最大38%薄くし1個当たり27gの軽量化を実現した(Fig. 8)。 コンロッドは,新開発の高強度コンロッドボルトを採用した。また,軽量ピストンに合わせて各部形状を最適化し高回転で必要な剛性を確保しつつ軽量化を実現した。 クランクシャフトは,高強度材へ変更し,製造時の抜き勾配の縮小と最適なウェイトの配置により効率よくバランスさせる改良を加えた。主運動系全体の改良でシステム合計の重量を旧型同等に抑えた。(Fig. 9) リンダーライナーとの間に発生する油膜圧力が上昇する。その結果,リングが掻き落とせなくなるオイル量が増えオイル消費が増加する。通常は高回転時に適正な油膜厚さとなるようにピストンリングの張力を高め対応するが

元のページ  ../index.html#88

このブックを見る