マツダ技報 2018 No.35
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■■■■■■■■■■■.■■■■■■■.■■■■■■■■ (6) ■■■■■■■■■■■.■■■■■■■.■ln■■■■■■ (7) 壁面境界層内流動の特徴を考察するためには,摩擦速度uで無次元化した,壁面に平行な方向の平均流速u+と壁からの距離y+との関係を調査する必要がある。摩擦速度は壁面せん断応力wを速度の次元で表現したものであり,式(3)で算出できるが,今回の計測で粘性底層内の速度勾配はとらえられていない。このため,壁面から十分に離れた乱流が支配的な領域で,u+がy+の対数関数で表現できる(以下,対数領域)という特徴を活用し,壁面から1mm以上離れた領域の平均流速分布を用いて,式(4)で摩擦速度を推定した(6)。 ■■■■■■■■■■■■■■ (3) ■■■■■■■■■■■■■1■■.■■■■■■ln■■■ (4) ■■■■■■■■■■■ln■■■■■■■■■■ln■ (5) -86- は密度,は動粘性係数である。また,定数は発達3.1 壁乱流が発達している流動場 発達した乱流場に近い流動場となるシリンダーヘッド(Type 1)を用いて,急速圧縮膨張環境へのモデル適用性について検証した。Fig. 4に壁面に平行な方向の平均流速Uyの分布を示す。本実験で構築したPIVにより壁面境界層内の急激な平均流速の変化をとらえることができている。 Fig. 4 Average Velocity Distribution(Type 1) Fig. 5 Dimensionless Velocity Distribution(Type 1) Fig. 6 Comparison of Wall Heat Flux(Type 1) マツダ技報 した壁面乱流境界層を仮定し, =0.41,B =5.2とした。Fig. 5に,計測による壁面境界層内のu+とy+の関係と,発達した乱流境界層におけるu+を破線で併せて示す。発達した壁面乱流境界層の分布をおおむね表現できており,対数領域の存在も確認することができる。これより,本流動場は発達した乱流境界層に近い状態と考えられ,式(4)による摩擦速度の推定は妥当であるといえる。ここで,発達した乱流境界層を想定して構築された伝熱モデルの適用性を検討する。伝熱モデルは,境界層内の密度変化を考慮しない場合に式(6),考慮した場合に式(7)のように表される。 qwは壁面熱流束,Cpは定圧比熱,Tgはガス温度,Twは壁面温度である。 これらに実験で得られた物理量を代入し,高応答熱電対から算出した壁面熱流束と比較した。比較を進める際には,壁面境界層内のガス温度分布を決める必要がある。一般的に,壁関数を用いた伝熱モデルでは,壁面第1層目の計算メッシュは対数領域に位置することを前提としている。このため,式(6),(7)から計算する壁面熱流束は,y+=150,300における値を求めた。これらの領域において,ガス温度は筒内平均温度に近いと仮定し,燃焼室内圧力より算出した燃焼室内の平均温度を用いた。Fig. 6に,式(6),(7)で算出した壁面熱流束と高応答熱電対で計測した壁面熱流束を示す。式(7)では,予測結果と高応答熱電対での計測結果はどの時刻においても定量的によい一致を示すことが確認できる。一方,式(6)では壁面熱流束を過小評価する結果となる。燃焼室内では,ガス圧力はほぼ均一となるが,壁面境界層内の急激な温度勾配により生じる密度分布が存在するためと考えられる。以上より,急速圧縮膨張を伴い,壁面境界層内の平均流速分布が発達した乱流境界層の分布と異なる流動場に対して,式(7)で壁面熱流束を正確に予測できることを実証した。 No.35(2018)3. 実験結果による伝熱モデル検証

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