-87- ここで,レイノルズ応力は乱流レイノルズ数を用い 対数領域が存在しないことから,摩擦速度の推定に式(4)を適用することができないため,別の推定方法を検討する。発達した乱流境界層においては,壁面せんて式(12)のように表すことができる。 これは,対象とする流れ場の乱流レイノルズ数が発達した乱流境界層と同じであれば,式(9)が成立することを示している。これより,Fig. 8で見られた発達乱流場とのかい離を補正するため,式(13)のように乱流が未発達な壁面境界層内と発達した乱流境界層内における乱流レイノルズ数で構成された係数を導入し,レイノルズ応力と摩擦速度を関連付けられると考えた。ここで,添字devは発達乱流場の値を表す。そして式(13)を基に,式(14)を新たに導出した。 以上の考え方の妥当性を検証するために,式(14)で推定した摩擦速度を式(7)に代入して壁面熱流束を算出し,高応答熱電対での計測結果と比較した。Fig. 9にこの結果を示す。前項と同様,ガス温度は指圧計測結果から算出した燃焼室内の平均温度とし,無次元距離は,y+=150,300をそれぞれ適用した。図より,両者の壁面熱流束は,定量的に強い相関があり,式(14)で推定した摩擦速度は妥当性が高いことを実証できた。 Fig. 7 Dimensionless Velocity Distribution(Type 2) Fig. 8 Dimensionless Velocity Distribution(Type 2) Fig. 9 Comparison of Wall Heat Flux(Type 2) No.35(2018) 3.2 エンジン燃焼室内に近い流動場 エンジン燃焼室内に近い流動場となるシリンダー ヘッド(Type 2)を用いて,対数領域が存在しない壁面境界層を含めた摩擦速度の推定方法を検討し,壁面マツダ技報 熱流束予測精度を検証した。連通路入り口に設置したパンチングメタルでエンジン燃焼室のバルブで絞られた狭い空間を模擬している。これを通過して燃焼室内に流入した空気が燃焼室内上方の壁面に衝突し,壁面に沿って流れる。更に,ピストンの動きが逆転する上死点直後に,壁面に沿う流れが崩壊する。Fig. 7に壁面に平行な方向のu+を示す。想定どおりに対数領域が表れていないことが確認できる。 断応力とレイノルズ応力の釣り合いと,境界層内での乱流運動エネルギーの生成と散逸の釣り合いを仮定した式(8),(9)から式(10)の関係が得られる。従来の壁関数では,一般的に式(10)で摩擦速度が算出されている。 Pkは乱流運動エネルギーの生成項,tは渦動粘性係数,Cはモデル定数である。一方で,乱流が未発達な状態の境界層においては,これらの釣り合いが取れていないと推測する。これを検証するため,壁面境界層内の乱流エネルギーとその散逸率の関係を表す乱流レイノルズ数(式(11))に着目し,DNS(Direct Numerical Simulation)による発達した乱流境界層(7)の平均値(y+<200)と比較した。結果をFig. 8に示す。 計測された平均乱流レイノルズ数は,発達乱流場とは大きくかい離していることが確認できる。また,両者の差は一定ではなく,時々刻々変化している。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ (8) ■■■■■■■■■■■■■ (9) ■■■■■■■■■ ■■■■■√■ (10) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ (12) ■■■■■■■■■■■■■■ (11) ■■■■■ (13) ■■■■■■■■_■■■■■■■■■′■′■■■■■■■_■■■■■■■■.■■■■■.■■√■ (14)
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