マツダ技報 2018 No.35
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-92- R2=0.89 ○ 9.2×10-4 mol cm-3 7 µm 5 µm Fig. 2 Relationship between Cycle Number of Rust Formation at Combined Cyclic Corrosion Test and Measured Voltage (Paint Type: A) (2) 10 µm Crosslink density, 10 µm◇ 31×10-4 mol cm-3 Fig. 3 Case Examples of Relationship between Height of Burr at Edge and Coatability of Electrodeposited Paint (Paint Type: B) (2) おける発錆までの期間との関係 複合腐食促進試験における発錆までの期間と腐食因子遮断性(電圧値)の関係をFig. 2に示す。膜厚が厚く,同膜厚では防錆塗膜樹脂の架橋密度が高い,すなわち膜質が良いほど,腐食因子遮断性は高くなった。また,腐食因子遮断性と複合腐食促進試験における発錆期間には高い相関が認められた。本評価技術では,従来3カ月後に発錆する防錆塗膜の腐食因子遮断性250V程度であれば,5分未満で評価可能である。このことから,塗装部の耐食性短期評価法として極めて有効である。 双方の極めて多岐にわたる耐食性影響因子を精度良く制御し,管理するプロセスが不可欠である。しかし,従来の実腐食試験に基づく防錆技術開発では,評価に多大な時間を要する,試験後の錆状況を確認することから定性的となる,大型部品は試験槽に入らずモデル試験片での評価となるために実性能を正確に評価できない等の理由で防錆技術開発の効率化と精度向上を両立することが困難であった。これまでに実腐食試験に代わる耐食性の代用指標評価法として,極微弱な電圧を印加するインピーダンス法やターフェル法は存在したが,操作が煩雑で評価に時間が掛かる,外乱の影響を受けやすく電磁遮蔽された空間が必要,複雑な形状物の測定が困難等のさまざ△9.5×10-4 mol cm-3 3.1 防錆塗膜の腐食因子遮断性と複合腐食促進試験に3.2 塗膜耐食性短期評価技術の有効性 塗装部の防錆品質を造り込むには,被塗物,防錆塗膜マツダ技報 まな制約があり実用性に乏しかった。本評価技術は極めて短時間に,工場等の電磁波ノイズの多い場所でも,複雑な形状物の耐食性をその場で評価できる実践的,かつ革新的な技術である。以降,新規開発した本評価技術が,これらの課題解決にいかに有効であるかについて被塗物の制御技術開発や塗料開発の事例を交えて紹介する。 (1) 被塗物の制御技術開発に対する有効性 被塗物の状態は塗装後の耐食性に大きな影響を与える。一例として,鋼板エッジ部のバリ高さと防錆塗膜による被覆性の関係をFig. 3に示す。バリが高くなると,被覆性は低下し,耐食性は悪化する。このバリ高さは,鋼種や鋼板の加工条件等によって変化する。一般に,防錆塗膜による被覆性評価は断面観察法による。断面観察法は,対象部位の電着被覆状態を顕微鏡により目視確認できることから有効な手段のひとつである。しかし,評価に時間が掛かる,切断等を行わずに対象部位を直接評価することができない,局所的な一断面の情報である等のさまざまな課題がある。 鋼板エッジ部の腐食因子遮断性に対するバリ高さ,防錆塗膜の平面部膜厚の関係をFig. 4に示す。バリが低く,防錆塗膜の平面部膜厚が厚いほど,被覆性が向上して腐食因子遮断性(電圧値)は向上した。この傾向は同試験片を用いた複合腐食促進試験における発錆期間の傾向と一致することを確認している。このように,本評価技術は被塗物の状態変化が塗装部の耐食性に与える影響を定量的に評価することができる。また,自動車のボディーや大型部品の塗装後の耐食性を直接評価できる。エッジ部相当の防錆性能を持つ部位であれば,1分程度で評価可能であり,耐食性に影響を与える被塗物側の生産条件の詳細な制御に極めて有効である。 次に,被塗物側の具体的な制御事例として,溶接条件を変化させた場合の塗装後の耐食性を示す。ここでは,主に溶接時の不活性ガス流量とガス組成を変化させた。Table 2に複合腐食促進試験後の溶接部近傍の外観,本評価技術で評価した溶接ビード近傍の腐食因子遮断性(電圧値)を示す。溶接条件を変化させることで,溶接ビード近傍のスパッタ(金属粒)やスラグ(ガラス質粒)量No.35(2018)3. 実験結果

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