マツダ技報 2019 No.36
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なS字カーブに保持できるシートを目指した。 3.3 シート構造 骨盤を立たせて脊柱のS字カーブを保持させるためには, Fig. 1 Vertical Displacement of Head while Walking -91- 3.2 バランス保持能力を発揮できるシート 理想の乗り心地を実現させるため,ドライバーが車の2. 人の普遍的な動作 3. 頭部を安定させる Fig. 3 Spine Curves (Side & Backside) (1) 骨盤全体を包み込むように支えることで,骨盤を自(2) 臀部が前ずれして骨盤が後転しないよう大腿部の支(3) 腰椎部を支え,骨盤が後転しないよう骨盤上部の支(4) 脊柱のS字カーブを維持できるよう,S字カーブ上部(1)については,骨盤が自立するように,骨盤直下の(2)については,大腿部の支持力を高めるために,クッFig. 4 Ideal Seating Posture させている。 シートに座った状態でもパッセンジャーユニットの「頭を安定させる」機能を発揮できるようにする。そのためにシートに着座した状態でも骨盤を立てて,脊柱を自然次のようなシート特性が必要であると考えた(Fig. 4)。 立させる。 持力を高める。 持力を高める。 にあたる胸郭重心位置を包み込むように支える。 これらのシート特性を実現させるため,シート形状やたわみ特性,構造を最適化した。 クッション形状をフラットな面とし,面全体がたわむ特性とすることで,骨盤の安定度を増した。 ション形状の変曲点位置を従来から変更し,変曲点前後の座面角度の変化量も最適化することで,臀部の前ずれの2つのユニットが骨盤を介して連携しながら機能するこFig. 2 Passenger & Locomotor Unit 3.1 パッセンジャーユニットの機能 パッセンジャーユニットは骨盤に入る入力に対して自Fig. 3のように脊柱を撓ませ,上体を骨盤の動きと逆相マツダ技報 No.36(2019) 達成結果について紹介する。 人は規則性のある滑らかな動きを心地よく感じ,不規則で不連続な動きを不快と感じる。普段何気なく行っている歩行動作を例にとると,三半規管がある頭部の上下の動きは僅か5cmほどに抑えられ,滑らかで連続したサインカーブで動いている(Fig. 1)。 人の体は骨盤と上半身から構成されるパッセンジャーユニットと,骨盤と下半身から構成されるロコモーターユニットに分けることができる(1)(Fig. 2)。歩行中はことで,どんな路面であっても目線を安定させて歩行することができる。この究極のサスペンションともいえるパッセンジャー/ロコモーターユニットの機能とメカニズムを新世代のシャシープラットフォーム開発に取り入れた。 らの姿勢を安定させる機能をもつ(1)。この機能を発揮させるために最も重要となるのが骨盤の姿勢である。骨盤が立った状態(ニュートラルポジション)であれば脊柱は自然とFig. 3のようなS字カーブを描いた形状となり,骨盤から伝わる振動に対して脊柱を柔軟に撓ませて頭部を安定させることができる。 また歩行動作を後方から観察すると左右の足の動きに合わせて骨盤を左右に傾けながら歩行している。この際,に傾けることで体のバランスをとり,頭部の動きを安定

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