マツダ技報 2019 No.36
101/321

3.4 シート着座姿勢 Fig. 8 Vertical Position of Foot Joints 4.2 ロコモーターユニットとしての車の機能 車のシートに座った状態ではロコモーターユニットの-92- 4. 入力を滑らかにする Fig. 7 Pressure Distribution of Backrest 4.1 ロコモーターユニットの機能 ロコモーターユニットは前に進む機能と路面からの入力Fig. 9 Transfer Function of Body to Car を防止した。更に大腿部を支持するクッション座面角度を変更できるように,前チルト調整機構を採用した。これにより,小柄から大柄な体格までの乗員を適切に支持することができた。 シートバックの各部位での支持力を変化できるように,独立したコイルバネを採用した。またそれらを人体の骨格を考慮して配置することで,骨盤上部・胸郭部それぞれで必要な支持力・支持範囲(Kt,Kl,Kp)を実現した。 骨盤の①上前腸骨棘と②大転子を結んだ線と,水平線の成す角度を骨盤角度と定義し(Fig. 6),触診により上記2点にマーキングを付け,側面からカメラ撮影し骨盤角度を算出した。標準体格のパネラーにおける立位状態からシート着座状態の骨盤角度の変化量をFig.6に示す。変化量が小さいほど骨盤が立っていることを示しており,新型MAZDA3は骨盤を立てて着座できていることが確認できた。 標準体格のパネラーで計測したシートバックの体圧分布をFig. 7に示す。縦軸にシートバックの高さ位置を,横軸に座面部の各高さ位置における荷重和の割合を示す。新型MAZDA3は,シートバックは骨盤上部の支持圧が高く,骨盤が倒れないように支持している。また,骨盤上部から胸郭部までを脊柱に沿うように連続的に支持しており,脊柱のS字カーブを保持しやすい特性であることが確認できた。 (3),(4)についてはシートバックの支持構造を変更した。Fig. 5 Backrest Structure (1) 骨盤を立てた着座姿勢 Fig. 6 Measurement Method of Pelvic Angle & Pelvic Angle Variation (2) 脊柱のS字カーブ保持性 マツダ技報 を滑らかに整える機能をもつ。人が歩行する際の下肢の動きを側面から観察すると,Fig. 8のように踵位置の軌跡は前後・上下に複雑で不連続な動きをしているが,下肢の関節や筋肉が連携して機能することで,骨盤の動きは小さく抑えられ,周期的で滑らかな動きとなっている。 機能を発揮することができない。そのためFig. 9のように車のタイヤ,シャシー,車体,シートがその役割を担うことになる。具体的にはタイヤとサスペンションによって路面から入る不連続な入力をXYZ軸の位相が揃った滑らかな入力に変換し,そして遅れなく車体に伝える。車体とシートはサスペンションから入る入力をドライバーの骨盤に遅れなく伝達させることを目指した。 No.36(2019)

元のページ  ../index.html#101

このブックを見る