マツダ技報 2019 No.36
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-93- 4.6 入力の位相を揃える(c) サスペンションに入るさまざまな方向からの入力に対 以下に,(a)から(d)それぞれについて具体的施策を述べ 4.4 タイヤの位置決め(a) 車体に入る入力を滑らかにするには,路面からの入力Previous and New MAZDA3 4.3 路面入力を滑らかにするシャシー 路面からの入力を,位相を揃えて滑らかにして,車体Fig. 10 Concept of Suspension Part Cooperates (a) タイヤの位置決め (b) タイヤのエネルギー減衰 (c) 入力の位相を揃える (d) ばね・ダンパーで入力を滑らかにする 配分し,相互支援しながら全ての性能を同時に高めていく考えに基づきタイヤ開発を行った。具体的にはタイヤの上下方向のばね定数を前モデルのタイヤに対して約わみによって滑らかにするとともに,惰行時はエネルギーロス少なく転がり,荷重がかかった時は接地面が広がり,タイヤ横力を遅れなく発生する特性とした。 して,ロアアームの作動軸を定め,ホイールセンターを動かしたい方向に動かすことで,入力の位相を揃えることを目指した。そのためにタイヤからの入力の方向を単純化して考えた。Fig. 11にその考え方を示す。前後方向の入力に対しては,ロアアーム後ろ側ブッシュを左右に動かし,前側ブッシュをピボットとしてロアアームが回転する挙動とした。上下方向の入力に対しては,前後ブッシュを軸とし揺動させる。そうすることで複合入力に対しては,入力の大きさによらずホイールセンターの動く向きが揃い,連続的な動きを作ることができる。ねらいの動きを実現させるために,ブッシュの並進方向,回転方向の特性を見直し,新構造のブッシュを開発した。前側ブッシュは前後方向のばね定数を高め,こじり方向のばね定数を低減させた。後ろ側ブッシュは前後方向のばね定数を高め,左右方向に動きやすいばね定数とした。ロアアーム前側ブッシュの特性比較を示す。 上述のブッシュに加えてサスペンションジオメトリー4.5 タイヤのエネルギー減衰(b) 新型MAZDA3ではタイヤを含めた車両全体で機能を再10%柔らかくすることで,路面からの入力をタイヤのたFig. 12にその一例として,新型MAZDA3と前モデルのFig. 11 Input Force to Front Suspension Fig. 12 Comparison LCA Bushing spring rate of マツダ技報 No.36(2019) に遅れなく伝えるために,タイヤ,サスペンション部品のエネルギー伝達を時間軸で連携させるというコンセプトの下開発を行った。Fig. 10はスロープ路面を乗り上げた際のエネルギー伝達のコンセプトを図示したものである。以下にその時間軸でのつながりを説明する。 サスペンションの支持剛性を高めて,路面からの入力を素早くタイヤで受け止める。 タイヤを早期にたわませて,路面からのエネルギーを減衰させ,残りをアーム・ばね・ダンパーへ伝える。 ロアアームの動きでタイヤから伝わる入力の向きを揃えて,素早く,ばね・ダンパーに伝える。 ばね・ダンパーを滑らかにストロークさせることで,入力を減衰させながら滑らかにし,残りを車体に伝える。 る。 を早期にタイヤで受け止める必要があり,サスペンションの位置決め機能が重要となる。前モデルのフロントロアアームの前側ブッシュは,車両前後方向のばね定数が低く,ストッパー部とのクリアランスがあるため,支持剛性が低い構造であった。新型MAZDA3では,前側ブッシュを,ストッパークリアランスを持たない構造に変更し,ブッシュの前後方向の剛性を高めた。これによりタイヤに前後方向の入力が入った際のホイールセンターの前後変位を,前モデルに対して約25%小さくすることができた。

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