マツダ技報 2019 No.36
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-103- 次章では,新世代商品群の第一弾である新型MAZDA3に 2.1 風流れの運動エネルギーの損失低減への課題 デザイン性,およびサーマルマネジメントの要求を満足 2.2 市場環境における最適な風量配分について 2.1で示したこれらの渦を低減させ,風流れの運動エネル2. 空気抵抗とサーマルマネジメントの関係 Fig. 1 Comparison of Resistance Fig. 2 Image of Separation Flow Fig. 3 KODO-Design (All-New Mazda3) Fig. 4 Image of Confluence Flow Fig. 5 Image of Wake 「混合渦」はエンジンルーム内の受熱する部品の冷却に使用された風流れと,車両周りに流れている運動エネルギーの高い風とが混ざり合い発生する渦を指す。例えばラジエーターグリルを介してエンジンルームに導入された冷却風は,タイヤハウス及びトンネルなどから排出される。その際,車両周りの風流れとの間に混合渦(Fig. 4)が発生し,風流れの運動エネルギーの損失が生じる。熱交換の為に部品近傍へ風を与えると,風流れの運動エネルギーが失われるため,少ない風で効率的に部品を冷却し,排出する風の向きと車両周りの風の向きを合わせることが課題である。 「後流渦」は前述の剥離渦や混合渦によって車両後端の風流れが乱れ,車両後方で上下左右の風が混ざり合うことで発生する大きな後曳き渦を指す(Fig. 5)。 よって剥離渦と混合渦の抑制が風流れの運動エネルギー損失の低減のための重要課題である。 ギーの損失量をより低減させるために,市場環境を考慮し,エネルギー損失の低減の可能性を検討した。 マツダ技報 No.36(2019) ンスミッション・バッテリー・エギゾースト・プロペラシャフトなど,各々の機能を最大限に発揮させるサーマルマネジメントにより決定される。 おける熱流体エネルギーマネジメント技術による,風流れの運動エネルギーの損失量低減とサーマルマネジメントの高次元での両立について述べる。 本章では空気抵抗と関係性のある風流れの運動エネルギーの損失量低減と,サーマルマネジメントを高次元で両立させるための考え方について述べる。 しながら,風流れの運動エネルギー損失量の低減を実現するには,車両で発生する「剥離渦」・「混合渦」・「後流渦」を抑制する必要がある。理想状態は,各渦がゼロ,すなわち,風流れの運動エネルギー損失量0である。 ノーズ先端やバンパーコーナー,取り付け部品周囲の段差などでは,風流れの剥離が生じやすい。「剥離渦」は,圧力の上昇によって物体表面から風流れが剥離する際に生じる渦を指す(Fig. 2)。 マツダは,低く伸びやかなノーズ先端や,丸みを帯びたリア周りを特徴としたデザイン(Fig. 3)を採用している。このデザイン固有の造形や,アンダーフロア部に位置する排気管や燃料タンク,サスペンションなどの部品による凹凸を克服し,風流れの運動エネルギーの損失量を改善することが課題である。

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