マツダ技報 2019 No.36
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(1)人間の持つバランス保持能力 (2)SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE (Fig. 1 )。 2.2 商品コンセプト MAZDA3はあくまでもターゲット顧客の日々の生活を ② エネルギーを受け止め,振動を減衰するボディー -4- 2. ターゲット顧客と商品コンセプト 3. 商品特徴 Fig. 1 Seat では世界カーオブザイヤーのファイナリストに選ばれるなど世界各国で高い評価を得てきた。そんな特別なモデルであるMAZDA3を新世代商品群の幕開けを飾るモデルとして世に送り出した。 しかしその道のりは険しかった。SUVブーム・電動化・自動運転・カーシェアリングなど自動車産業にとって構造変革を迫られるほどの新しい波が来ているなかでの船出である。この荒波のなかで,新型MAZDA3がふたたび世界中の全てのお客様に驚きと歓びを与える商品になるためには,いったい何が必要なのか? その答えが「誰もが羨望するクルマ」になることであった。奇をてらうことなく,クルマとして当たり前を感動のレベルにまで仕上げていく。デザイン・走り・静粛性・クラフトマンシップ・環境性能など全ての性能を飛躍的に高め,これまで誰も体験したことのない価値を創ることに挑戦した。それが新型MAZDA3である。 客様に乗っていただくモデルである。よって年齢や性別ではなく,ライフスタイルでターゲット顧客を規定した。新型MAZDA3のターゲット顧客は,「自身のパーソナルライフを充実させるために,時間・労力・お金を費やそうと考えている人」である。彼らは知識と向上心を持ち合わせており,彼らを魅了するには,単純な性能の善し悪しだけでなく,彼らの心が揺さぶられる感情的な魅力が必要となる。 支えるクルマであると考えている。よってコンセプトを立てる上で大事にしたことは,非日常的なサプライズを求めることではなく,ターゲット顧客の日常を輝かせることである。また知識と向上心を持ち合わせている彼らを魅了するために,商品価値を機能的価値,情緒的価値,自己表現価値の3階層として設計し,一瞬で心を奪う分かりやすさと使っていく中で離れられなくなる奥深さの両立を図った。 機能的価値としては,まるで自分の足で歩いているかのような自然な感覚で運転できること。情緒的価値としては心が落ち着き感性を研ぎ澄ますことによって,ピュアな自分と向き合えること。自己表現価値としては,心の中に抱くあこがれの自分になれることを設定した。 これらの価値を具備することによって「誰もが羨望するクルマ」となることを目指した。 2.1 ターゲット顧客 新型MAZDA3はマツダブランドの顔であり,幅広いおが安心して思いどおりに運転できる。またドライバーだけでなくこのクルマに乗る全ての人が“走る歓び”を享受できるようになることがこの機能的価値のねらいである。 人は歩いたり,走ったりしても酔うことはない。足・骨盤・脊柱を絶妙にコントロールし,わずかな筋力で頭の揺れを抑えているからである。この能力があるからこそ,方向転換や段差を越えながらでもスムーズに進んでいくことができる。しかも人はこの複雑な動きのコントロールを全くの無意識で行っている。これが「人間の持つバランス保持能力」である。 人間のバランス保持能力をクルマに乗っているときにも最大限に発揮できることを目指したのが新世代車両構造技術「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」である。SKYACTIV-VEHICLE ARCHTECTUREは個々のシステムよりも「クルマ全体のコーディネイト」を重視し,人が座るシートからボディ・サスペンション・タイヤまでの全ての部品が,時間軸で有機的に連携して動くことをねらって開発した。 シート 新型MAZDA3のシートは,骨盤下部・骨盤上部・大腿部を支えることで骨盤を立たせ,胸郭重心を支えて背骨を動かし,バランスを取ることができるようにしたその結果,乗員は路面からの入力や衝撃に対し,少ない力で頭部を安定させることができ,長時間のドライブでも疲れにくい。 基本骨格のストレート化と環状構造を基本とするマツダ独自のボディーを更に進化。これまでの上下左右方向3.1 歩いているかのような自然な運転感覚 初心者であっても,熟練ドライバーであっても,誰も① 骨盤を立たせて脊柱の自然なS字カーブを保つのS字カーブを維持し,歩行時と同じように骨盤や脊柱マツダ技報 No.36(2019)

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