マツダ技報 2019 No.36
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】N/)2s/m【ecnatren (i -121- Fig. 5 Stiffness of Door vs Cowl-Side Fig. 6 Relation of S.P.L @ 40Hz Ear Point Ear Point 音圧が必要となるが,そのためには,口径10cm~13cmのスピーカーと内容積10リットルのバスレフ型のボックスが必要となる。これらの結果から,10リットル以上バスレフ型ウーファーをカウルサイドに配置することが理想であると考えた。 別している。そのため,波長が短い中,高域の音は,到来方向を認知しやすくなる。そして,マツダの試聴室を含む一般的なホームオーディオでは,スピーカーを耳位置程度の高さで左右対称に配置し受聴者の方向に向け,スピーカーから再生される直接音を主体に聴きくことで音源に入っている情報を正しく認知できる。一方で前世代商品群は,インストゥルメントパネル上面に中高域再生用のスピーカーを配置していた。この配置では,スピーカーの再生音は必ずフロントガラスに反射する。ガラスとスピーカーの距離も近いため,直接音と反射音が干渉し合った音を聴くことになる。直接音と,時間的遅れのある反射音とが合成された干渉音は,受聴点において,音源の音に対し①歪を生じる,②周波数特性が乱れる等,明瞭度を劣化させる原因となる。これはCAE解析でも可視化ができた。Fig. 7はスピーカーをインストゥルメントパネルとドアそれぞれに配置し,トゥルメントパネル配置は受聴点での干渉縞が深くなっているが,ドア配置は比較的浅い。これは,ドア配置のような直接音重視の配置では,干渉波の影響が少なく周波数特性をフラットにでき,再生された音を正確に聴くことが可能となることを示している。 更に,直接音を主体に聴くためには,スピーカーを小型化しレイアウト自由度を上げることが重要になる。小型化は,スピーカー自身で生じる歪の抑制にも効果的である。20Hzまでの重低音を聴くためには40Hzで95dB以上の3.2 中域・高域再生 人は左右の耳に入る音の時間差と位相差で到来方向を判4kHzの音を出力した状態のCAE解析結果である。インスIP Mount Sound Source Door Mount Sound Source Fig. 7 CAE Result of IP Mount vs Door Mount マツダ技報 No.36(2019) カウルサイドは周波数に対する形状の変化が少ない,いわゆる,動剛性がよい場所でもある(Fig. 5)。加えて,ドアにあるハンドルやウインドウレギュレーターのような可動物もなくスピーカー振動による異音の誘発を起こさない理想的な場所でもある。 カウルサイドへのスピーカー配置は遮音性能も向上させる。遮音性能は,ボディーの穴や隙をなくし多重壁にすることで向上する。ドアからカウルサイドにスピーカーを移動することで,ドアスピーカーの取付け穴を廃止できる。これにより,ドアのアウターパネルとインナーパネルで多重壁を構築することができ,遮音性能が向上する。 次に,カウルサイドで低域再生するのに最適なスピーカー構造を考える。スピーカーの再生帯域は振動板の重さで決まり,重くなるほど低い音を再生できる。音圧は振動板半径の2乗と振動板の振動速度に比例する(1)。つまり,低域については口径が大きい方が効率良く再生できる。それから,低域の音は回折しやすいためスピーカー前後に干渉を防止する遮蔽板が必要となる。一般的にはボックスにより前後の音を遮蔽するが(2),低域再生用スピーカーでは空気バネの影響を小さくするため大容量のボックスが必要となる。前世代商品群では,大口径スピーカーとドアシェルを活用した大型ボックス構造で低音再生を機能させていたが,カウルサイドには大型ボックス構造を造る空間はなく,小型ボックスで効率よく低域再生できる構造が必要となる。そこでバスレフ型(ヘルムホルツ共鳴を利用したポートで低音を増幅させる構造)と呼ばれる構造(2)で低域再生能力の検証をした。Fig. 6 はバスレフ型において,スピーカー口径とボックス容量の変化により再生できる最大音圧レベルの変化を示したグラフである。

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