マツダ技報 2019 No.36
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4.1 3リットルウーファーのカウルサイド配置 ・3リットルウーファーのカウルサイド配置 -122- 新型MAZDA3のサウンドシステムでは“車室内の理想音4. 新型MAZDA3での実現手段 Cowl Side Upper ⇒Woofer box Cowl Side Lower ⇒Other UNIT Fig. 9 Cowl-Side Aria Layout 200Hz~8KHz程度までを再生させる中域再生用スピーカーFig. 8 All-New Mazda3 Sound System 8kHz以上,スコーカーは8cmで200~8kHz付近までを再生スピーカーは分割共振やエッジの逆共振により音源に含まれる音とは異なる音を発生させる。これはスピーカーの振幅速度が速くなる中,高音域で発生しやすい(1)。この音を抑制するには,振動板を小口径にして軽量化を行い,高速で振動板を動かすことが効果的となる。しかし,振動板を軽量化すると共振周波数が上昇し再生帯域が狭まるため,(スコーカー)と,8kHz程度以上を再生させる高域再生用スピーカー(ツィーター)の構成とし,搭載位置は,直接音が主体となる場所で,より小型なツィーターは耳の高さに合わせることが理想と考えた。 一方で,車室内の音響は座席の位置関係により必ず左右のスピーカー配置が乗員に対し非対称になるため,理想を実現することが難しい。ステレオ音源では受聴者に対してスピーカーを左右対称に配置することで定位感や広がり感を正しく再現できるのだが,非対称に配置すると正しく再現できなくなる。この現象は,人の聴覚の特徴である先行音効果が働き発生する(3)。先行音効果とは,複数の同一音が再生された場合,先に届いた音の方向に定位してしまう現象である。車室内では,この現象により耳に近い方のスピーカーに音の定位感がシフトし,広がり感が狭くなる。これに対してはDigital signal processor(DSP)による時間と位相の制御で疑似的に左右の距離差を均等にする技術により,理想を実現できると考えた。 車室内の理想音響実現するために必要な要素は①10リットル以上の容量を持つバスレフ型ウーファーのカウルサイド配置と②中高域再生用スピーカーの直接音重視の配置である。新型MAZDA3では,これらの必要な要素を車両に搭載可能な構造にしてサウンドシステムを構築した。Fig. 8にその新型MAZDA3のサウンドシステムを示す。 響の考え方”に沿って,低域,中域,高域それぞれの帯域に再生用スピーカーを割り当てた。ツィーターは2.5cmで200Hz付近まで再生可能となる内容量3リットルのバスレ60Hz~20kHzを再生可能とし,MAZDA Harmonic Acousticsと名付けた。更に,上級グレードのシステムにはMAZDA3のサウンドシステムにおいて軸となる次の2項目MAZDA3では,まず,限られたスペースを効果的に活用す可能とするユニットを開発した。ウーファーは,60~フ型ボックスウーファーを開発した。これらのスピーカーで構築したサウンドシステムは音楽を聴くには十分な帯域サブウーファー,センタースピーカー,サテライトスピーカーを追加した。インストゥルメントパネル中央の8cmのセンタースピーカーは助手席や後席の定位感の向上を可能にし,トランクのサブウーファーは重低音領域の再生を可能にすることで,理想の音響性能へ近づけた。この新型について詳しく述べる。 ・中高域再生用スピーカーの配置 カウルサイド下部に10リットル以上の容量を持つバスレフ型ウーファーを配置し,20Hzまでの重低音を再生できるようにすることが音響的には理想である。しかし,車両のカウルサイドは,①アクセル操作を行うスペース②電装品,ハーネス,HVAC,インシュレーター等の部品スペース③インストゥルメントパネル搭載用冶具のスペースなどの制約条件があり,大型のバスレフ型ウーファーを配置する物理的空間を確保することは非常に難しい。加えて,音響的に理想であるカウルサイド下部は,アクセル操作スペースとボディーパネルに挟まれており,スピーカーユニットを配置する空間確保が困難な部位である。そこで新型るため,カウルサイド上部にウーファーを配置し,その周囲にハーネスを配策した。従来カウルサイド上部に配置していた補器類はカウルサイド下部に配置した(Fig. 9)。 次に,カウルサイド上部で最大限容量を確保するため,次の施策を開発初期から織り込んだ。①ヒンジピラーインマツダ技報 No.36(2019)

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