マツダ技報 2019 No.36
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■著 者■ -124- 5. 新型MAZDA3音質の仕上がり 6. おわりに 参考文献 Fig. 14 Squawker Location FRONT DOOR Fig. 15 Squawker Mounting Structure REAR DOOR 若松 功二 西嶋 孝祥 遮音構造との両立:遮音はボディーの穴や隙をなくし多重壁にすることで性能が向上する。新型MAZDA3ではドアに多重壁構造を採用し遮音性能を向上させている。そこで,スピーカー配置場所も多重壁構造にするため,ドアインナーパネルに穴を開けなくとも空間のある場所に配置した。リアドアはチェッカーの取り付け作業穴を塞ぐホールカバーを活用し遮音構造とスピーカー配置を両立させた(Fig. 15)。 スコーカーをドアインナーパネルに穴を開けずに配置することは音響性能からしてもメリットがある。パネルに穴を開けて取り付ける場合,防水加工が必要になる。防水加工は,振動板に樹脂を含侵させる必要があり音質に影響を与える。パネルに穴を開けない構造にすることで,振動板材料の選択肢を拡大することが可能となり,スピーカー単体性能を向上させることができた。 新型MAZDA3のサウンドシステムでは,中高音で直接音を主体とした音作りを行った結果,音の細部までしっかり再生できるようになり,明瞭度を飛躍的に向上させた。加えて,DSPの制御を活用し,ドライバーモードとオールモードの二種類の音響空間モードを設定した,これは,車両の使用シーンに合わせて常に良い音を聴くことができるためのモードである。ドライバーモードは,ドライバーの耳位置で最も良い音が聴こえるように時間と位相を調整した。オールモードは全席で均等な音質で聴くことができるように運転席と助手席の耳位置の中間点で時間と位相を調整した。低音については,3リットルのバスレフ型ウー(1) 山本武夫編著:スピーカ・システム,上巻,(株)ラ(2) 監修 佐伯多門:新版スピーカ&エンクロージャ百科,(3) 平原達也共著:音と人間,コロナ社,p191 ファーをカウルサイド上部に配置する事で,量感を十分に感じつつ応答性のある低音再生を実現した。前世代商品群ではでは標準化していた低音再生用スピーカーのドア配置をカウルサイドへの移設したことは,車室内の騒音レベルの低減にも貢献した。この効果はオーディオの音が際立つ方向にもつながった。更に,オーディオやハンズフリー通話音などスピーカーから出力される音が車室外に漏れにくくなり車全体の質感を高めることができた。 新型MAZDA3のサウンドシステムを開発するにあたり,“お客様に聴いていただきたい音は何か?”を熟考した。理想の音を目指し車室内の音場をコントロールする事が重要であると考え,音響工学的にスピーカーの最適位置を探求した。車室内の音場の変化を理解するために,人間の聴覚の仕組みから,室内音響工学,スピーカーのメカニズムなどを調査し,測定,CAEを行う技術も高めた。サプライヤーの方々にも難しい条件の中で素晴らしいスピーカーを開発いただいた。結果,新型MAZDA3のオーディオサウンドは,従来の開発車種を卓越した性能とすることができた。新型MAZDA3に乗車されたお客様には,音楽を通してドライビングを楽しんで頂ける事を期待する。最後に,この開発にあたって多大なご支援をいただいた社内外の関係各位に対し,深く感謝致します。 ジオ技術社,p17-20,p58-63,p154-157 (株)誠文堂新光社,p108,p118 六浦 潔 平尾 幸樹 マツダ技報 No.36(2019) 山中 尋詞 手島 由裕

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