マツダ技報 2019 No.36
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(Fig. 3)を基本方針とし,開発を進めることとした。 -126- 2.2 FMフェーズダイバーシティー受信技術の採用 FMラジオの移動体受信においては,地形や建物で発生 2.1 ガラスアンテナ素子技術開発への取組み ラジオ受信システムは,アンテナ素子→アンテナアン2. 開発方針 Fig. 1 Example of Mazda’s Design Concept Fig. 3 Constitution of Rear Glass Antenna Fig. 2 Ideal Reception System の課題を解決する手段の1つとして,AM/FMラジオ受信用としてはリアガラスアンテナが開発され,セダン系車種を中心に採用されている。一方,ハッチバック系車種のガラス面積の狭い車両においては,アンテナ素子を構成するエリアも狭くなることで受信性能の確保が難しく,更には電装品用ハーネス経路がアンテナ素子に近接するため,車両ノイズ対策が必要となる。以上の理由から,ハッチバック系車種には,ルーフアンテナが採用される場合が多く,ガラスアンテナを採用している場合でイヤーハーネスに追加することが必要となり,コストや重量等の問題を抱えていた。 本稿では,上記課題を解決するため,新たに開発した新世代リアガラスアンテナシステムの技術内容について報告する。 新世代商品のアンテナ開発構想を立案する中で,お客様への提供価値を最大化するため,理想のラジオ受信システムについてゼロベースで検討した。その結果,マツダの強みである際立つ車両デザイン(Fig. 1)と調和しつつ,「いつでも・どこでも・良い音をお客様へ提供」できる性能が確保できている状態を理想と定義し,それを実現するためのアンテナ方式を選定した。一例として,ることで,良好に聴取できるエリアを最大化することをねらった(Fig. 2)。その結果,1) 受信品質改善に効果のある,FMダイバーシティー受信やデジタルラジオ受信へ対応,2) 車両デザインと性能を両立,3) 車種や車形間で共通に構成する部品を使用,4) 物理量(コスト/重量)を最小化等の実現性の観点から,新世代商品では,ガラスアンテナのみでアンテナシステムを構築することプ→フィーダー線→チューナーの4つの構成要素からなる。このうちアンテナ素子は,リアガラス上にデフォッガーとともにプリントされるもので,車種や車形ごとに開発が必要であり,受信システム全体の性能を左右する。このため,マツダはこの技術をカーメーカーが保有すべき重要な要素技術を考え,技術開発に取り組んできた(1)。この技術を応用し,全車でリアガラスアンテナを採用する上で最大のネックとなるハッチバック系車種の狭面積リアガラスでアンテナを成立させるための技術開発に注力することとした。 もAM性能補償用のチョークコイルをデフォッガーのワFMラジオ受信においては,反射波による影響を抑制すAM/FMラジオ受信用としてのルーフアンテナは廃止し,する反射波による電波干渉,いわゆるマルチパスフェージングの影響を受け,音声にノイズが発生する場合がある。従来はノイズ感を抑えるために耳障りなノイズ成分が多く含まれる音響特性の高域のレベルを下げ,ノイズ感の抑制を行っていたが,音質劣化の弊害もあった。一方,近年のデジタル技術の進展により,複数のアンテナによる受信電波を位相調整/合成することで,反射波の影響を打ち消し,音質劣化を招くことなくノイズを排除できマツダ技報 No.36(2019)

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